危険な管理不全マンションの現状
全50戸のうち現在はちょうど半数の25戸が埋まっており、内6戸には部屋を自ら所有する住人が、そのほかは賃貸入居者が暮らす。木村さんは管理組合の総会のお知らせを全国に散らばる区分所有者全員に毎年送付するが、出席率は低い。
居住していない所有者は特に建物への関心が薄く、中には管理費を滞納している人もいる。ここから管理費・修繕費の値上げは望むべくもない。1階に住む70代の住人は「年金暮らしで手いっぱいで、とてもじゃないがこれ以上お金を出すことはできない。エレベーターが動かないと上の階の人は困るだろうけど、とりあえず自分は今困っていないから……」と本音を漏らす。
木村さんに管理を依頼する住人がいたということは、マンションの状況に危機感を覚えている人はいる証左だ。しかしそれ以上に積極的な姿勢は見えてこない。住人同士の交流はほぼなく、取材中に行き合う人にあいさつをしても返ってくることはなかった。カメラを持って生活空間に入り込んできた人間に対する警戒心と同じくらい、自室の外で人とコミュニケーションをとりたくないという思いを感じた。
木村さんも80歳になり、日々の管理作業が体に響くようになってきた。いつまでこの業務を続けられるかわからない。
「管理不全マンションの現状はこんなに危険なんだと、たくさんの人にわかってもらいたい。これからこういうマンションはどんどん増えていきます」
そう訴える声は切実さを帯びていた。
図/書籍『老いる日本の住まい 急増する空き家と老朽マンションの脅威』より
写真/shutterstock













