「気持ちわりっ」な社会への警鐘
第二話で訴求されたのは「働き方改革」。シングルマザーの犬島渚(仲里依紗)が職場復帰すると、待っていたのは働き方改革の上澄みばかりをすくい上げた、働きにくい職場。ここでのミュージカルは「同調圧力があって、強制じゃないと言いながら帰れない空気がある」という社員の不満から始まった。
「給料上げて(ひとりでやるから)、託児室別館にしないで、ペーパーレスはあとにして、ランチは1時間保証して、シフト制は仕事を覚えてからにして」
渚の歌う本音が沁みる。新しい価値観を持ったように見える働き方改革は、そもそも運用ができていない。途中、市郎が言う「働き方って、がむしゃらと馬車馬以外にあるのかね」というセリフも沁みた。
続けて第三話は「ハラスメント」について。
テレビ局内では情報番組のプロデューサーが「(女性に対して)かーわーいい〜、髪切った? なんて聞いてはいけない」「カニクリームコロッケの中がトロトロはダメ!」「稲庭うどんシコシコはダメ!!」と、表現規制の奴隷になっていた。地上波ではありがちな話だ。
昭和に戻った市郎も、大事な一人娘の純子(河合優実)を通して“エロい目線”について考える。純子が視聴者参加型のポロリもあるようなテレビ番組に出ると聞き、スタジオ観覧に行く市郎。セクシー女優のポロリは期待するのに、娘には何もしてほしくない。このふたつの気持ちの乖離から市郎は気づき、歌う。
「みんな自分の娘だって思えばいいんじゃないのかな」
「娘に言わないことは言わない、娘にしないことはしない、娘が喜ぶことをする。それが俺たちのガイドライン」
地上波での表現もスポンサーや視聴者の反応を気にし過ぎて、正解がわからなくなっているテレビ。これに対するようにSNSでは一般人が性的な写真や動画を次々にアップする、現代社会。ガイドラインもなく、皆が違和感を持っている最中、市郎が気づいた「娘にしないことはしない」は明解、明答だった。