「あいつは期待はずれだったわ」

やり手の父と「ケン坊」の確執が決定的になったのが、志保容疑者との結婚だったという。2人は“夜の店”で「客」と「従業員」として出会い、親しくなった。

「たしか体を密着するような接客業の店かなんかで出会ったらしくてさ、Iも猛反対したんだけど、そのまま結婚しちゃってさ。それまでケン坊の教育には相当力を入れてきたから、もうちょっと別の女性と結婚してほしかったんだろうね。

だから結婚してからも『あいつは期待はずれだったわ』と愚痴をこぼしていたね。ケン坊にはそれだけ期待していたからショックが大きかったんだろう」

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逮捕された志保容疑者(撮影/集英社オンライン)

Iさんの兄の妻(86)も「ちょうど今さっきニュースを見たばかりで...」と驚きを隠せない様子で、次のように語った。

「ええ、ケンちゃん(健一容疑者)ね...。私は亡くなったケンちゃんのお母さん、Yさんと仲良しで、月に2~3回ほど遊びに行ってたんですけど、小さいころのケンちゃんは礼儀正しい子という印象しかなくて...。

それこそ家にお邪魔したときには、まだ3歳とか4歳なのに、『よくいらっしゃいました』とか『お気をつけてお帰りください』なんて大人顔負けの対応をしたものですよ。まるで大人が子どものフリをしてるみたいで少し怖くなったくらいでした。

でも実際にIさんも『家業の跡取り息子』としてケンちゃんを相当かわいがってたみたいで、上のお姉ちゃん2人は公立の学校だったのに、ケンちゃんだけ私立の付属校の幼稚園、小中高に通ってました。ふだん着ている服も襟つきのシャツにベストみたいな感じでお姉ちゃんより明らかに仕立てがよくて、いかにも“お坊ちゃん”といった感じの子でしたね」

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健一容疑者が経営していたホテル(撮影/集英社オンライン)

ところがボンボン息子は大学卒業後、少し反抗したようだ。

「てっきりすぐに家業を継ぐのかと思ってたんだけど、ケンちゃんは大学を卒業してからお父さんとは仕事をせずに、電気屋さんの販売員を始めたのよ。そのあとも婦人靴のお店で働いたりと職を転々としたあと、やっとお父さんが営んでいた革製品(なめし革)の会社を手伝い始めたの。

それからはしっかりと家業を継いだみたいで、ケンちゃんと最後に会ったときは、Iさんのお葬式だったんだけど、喪主も務めていましたね。参列者に頭を下げて気丈に振る舞っていましたし、そのとなりで奥さんの志保さんも生まれたばかりの赤ちゃんを抱いていて、すぐそばには幼稚園児くらいのお子さんもいましたね。

私に対しても『どうも〜』と笑顔で挨拶してくれましたし、まさかこの夫婦が、娘さんを手にかけるとは夢にも思いませんでした」