男性は女性の話をもう少し真面目に聞けるようになるべき
──理屈で言いくるめるリベラル男がたくさんいるんですね。
僕はそれこそ宮台さんから直接「主知主義」と「主意主義」の違いを教えてもらいました。宮台さんは僕との共著の中で、社会がよくなれば人は幸せになるという考えかたを「主知主義」、社会がよくなってもそれだけでは人は幸せになるとは限らないという考えかたを「主意主義」と定義しています。主知主義では大事なのはルールであり個人の意識はそこまで問われず、主意主義では自分自身が変わらずに魂がさもしいままだと幸せにはなれないということです。
リベラルであるなら社会的には弱者の声に耳を傾けることを重視するはずなのに、自分の性愛の場においては、女性から不満を述べられたときにもっともらしい理屈で逃げて、その女性と向き合わない。そういうリベラル男性は、主語を大きく語ることでまともな会話ができているように見せかけながら、実のところ男のエゴが強固で、自分自身は変わりたくないのでしょう。既得権益を守っているんです。
──社会を語ることによって、個人の欲望に向き合えないことがあるということですね。
はい。けっきょく大切なのは、相手が本当は何を望んでいるのか、というちょっと考えればわかることを真摯に受け止められるかどうかです。ところが暴力的な人はそれをもちろんしないし、知性や権力を自分のためにしか使えない人もできない。これは自戒を込めて言うのですが、松本さんと宮台さんの両者の報道の反響を受けて、男性は女性の話をもう少し真面目に聞けるようになるべきだと思いました。
文/山下素童