【宇推くりあ×佐々木亮 特別対談】 JAXAのSLIMが世界初のピンポイント月面着陸成功! 宇宙はこれからもっと近くなる!? 未来の探査の可能性を語る_1
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世界初となる「ピンポイント着陸成功」の意義

佐々木 ついにSLIMが月面着陸に成功しましたね! よみタイの連載でもこのプロジェクトについて紹介しましたし、自分のポッドキャストでも配信して応援していたので、本当によかったです。僕自身ドイツのテレビ局からもSLIMについての取材を受けたりしたので、やっぱり世界的にも注目度が高いプロジェクトだったと思います。

宇推 ほんとによかった~!! SLIMだけじゃなくて、これまでの「ひてん」や「かぐや」といった、過去のミッションの成果が今回の着陸実証につながっているんですよね。そのことがJAXAの着陸LIVE配信の導入にもしっかり紹介されていて、目頭が熱くなった宇宙ファンの方もいるんじゃないかなって思います。

佐々木 以前、SLIMに関してJAXAの方たちと一緒に動画配信もしてましたけど、チームの雰囲気で何か印象に残っていることはありますか?
 
宇推 月の特定の場所に着陸させるのは、やっぱりかなり難しいみたいなんですよね。だけどそれに対して深刻になっているというよりも「自分たちの考えたアプローチ方法が果たしてどんな結果をもたらすのかな? ワクワク!」みたいな、そんな印象を受けました。

佐々木 LIVE配信も一時約30万人の視聴者がいて、かなり注目を集めてましたよね。今回は、その配信直後の20日に発表された「着陸成功」の意味と「ソフトランディング」ということからまず触れておきたいです。

宇推 2007年に打ち上げられた「かぐや」は高画質の映像の撮影など、軌道上からの観測が目的だったので、探査が終わった後は意図的にハードランディングで「落とされた」わけですよね。SLIMの前には民間企業のispaceが「HAKUTO-R」というプロジェクトで月面着陸を目指したけど、この時は月面に落ちてその後通信できなくなっちゃったから、着陸成功ではない。

佐々木 プロジェクトの設計と狙い通りに機能したか、それが検証できるように通信が生きてるかなどがポイントになりますね。その点でまず第一段階として「着陸成功」と発表された。そして25日には「ピンポイント着陸」の成功がデータ解析から実証されました。これまでとは段違いの精度で着陸できたことは本当に革新的なことですよね。「降りやすいところに降りる」のではなく「降りたいところに降りる」着陸の成功は、世界に存在感を示すことになるはず。

宇推 今までの着陸ではkm単位でずれることは珍しくなかったんですけど、SLIMが目指していたのは精度100m以内のピンポイント着陸。これって例えば東京駅を目指したときに、うっかり川崎に着いちゃうのか、駅周辺に着けるのかくらいの差があることで。

佐々木 ピンポイント着陸は、当初データ解析して成否がわかるまで1ヶ月くらいかかるとされてましたけど、わずか5日で成功が発表に。その早さにも驚きました!

宇推 1月25日の記者会見で成功が発表されたときは、本当に語彙力失うくらい感動しちゃって……。同時に公開された、SLIMに搭載されたSORA-Q(変形型月面ロボットLEV-2)が捉えた画像もとにかくすごかった!! あまりの美しさにCGじゃなくてリアルなんだ、これ……って! 月面探査機本体を捉えた本当に貴重な写真だと思います。タカラトミーから月に行ったSORA-Qの実物大のラジコンが販売されてるから、みんな買ったほうがいいよ!!(笑) 変形も操縦も楽しめるし!!

佐々木 SORA-Qを共同開発したタカラトミーにも注目が集まりそうですよね(笑)。超小型月面探査ローバ「LEV-1」も搭載されていましたが、このLEV-1、SORA-Q(LEV-2)がしっかり動作したことも重要だと思いました。SLIMはピンポイント着陸を果たしただけでなく、搭載していたLEV1、LEV2がちゃんと作動したことで、運搬機としての役割を果たした点にも注目したいです。今は着陸成功自体に注目が集まってますが、いずれは機器を搭載して、月面に運ぶためのただの手段になるわけですよね。着陸後の記者会見では、これから月に探査機が続々と送り込まれることや、火星探査というワードもでてきて、ワクワクしました! 

宇推 私も「すごいこと言ってる!」って記者会見を見ていてつい叫んじゃいました(笑)