【中村憲剛×町田瑠唯対談 後編】勝つチームとは日常の基準が高く、やっていない人が浮く組織である_2
富士通レッドウェーブで優勝したい強い想いを語る町田選手。

三冠王・落合さんも語っていた「量があるから質が生まれる」を大事にする

町田 うちはどちらかと言うと、まだ「あの選手だからしっかりやっている」みたいな目線なのかもしれません。やっている選手との意識の差がどんどん広がってしまいかねないというか……。

中村 自分が現役当時は、いろんな選手を巻き込みましたよ。上の年代の選手だけじゃなくて、中堅、若手にも伝えて、選手ミーティングもやって“みんなでやっていこうよ”と。みんなの足並みが揃わないと、やっぱりタイトルは難しい。巻き込んでいくと、“人ごと”じゃなく“自分ごと”になっていきました。ただし、無理やりにその選手を引き込もうとしてもダメで、その選手がチームにとって大切であり、期待していることを感じられるような巻き込み方をしましたね。

町田 私はチーム全体に伝えることがあまり得意でなく、個々にアプローチするタイプかなと思います。

中村 人それぞれタイプがありますからね。キャリアを積み上げてきた町田選手の言葉は、若手選手にとっても大きいはずです。

町田 例えば、やっぱり試合にあまり出られないと、その選手の意識は低くなってしまいがちですよね。引き上げていくというのは簡単ではないですが、試合に出ることができなくてもチームにどう貢献できるか。目指しているものがバラバラにならないように、そこは伝えていくしかないと思っています。

中村 僕の経験で言わせてもらうなら、そういった選手の意識を高めていくことは監督やコーチングスタッフでもできるけど、選手の立場からアプローチすることも効果的かなと思います。だから町田選手やチームのキャプテンをはじめ、ある程度何人かを巻き込みながらやっていくのはありかもしれません。みんなが同じ方向に顔を向けて初めてチームの一体感は出てきます。誰か一人でも、今日は負けそうだなとか別の方向に顔を向け始めると一体感は出ません。練習でも同じですね。

町田 練習においての質はもちろん、私自身は量も大事にしています

中村 わかります。NHKの「サンデースポーツ」で落合博満さんとご一緒させてもらったとき、落合さんが「量があるから質が生まれる」とおっしゃっていて、心に刺さりましたね。

町田 本当にそう思います。

中村 ぜひレッドウェーブに頑張ってもらって、タイトルを掴み取ってほしいですね。負けるとどうしても自分たちのやり方や歩みが間違っていたのではと否定しがちですけど、優勝できたらそこまでの過程が肯定される。自信にもなるし、何よりもっと厳しさが出て基準と目線を上げることができる。フロンターレの場合、チームが「絶対に連覇する」というマインドになって、実際そうなりました。

町田 成功体験を得られたことで、意識も高くなった、ということですよね。私も、このチームでもっと頑張っていかなければと感じています。