空港から市内中心部への直行バスもなく
前出の『もぐらの里』店主の土屋さんもこう気を揉む。
「この地球上で3番目に訪れるべき場所と評価されても当惑してしまう。率直に言えば山口はインバウンド対応はできていない。なにしろ、現状は山口宇部空港から観光スポットのある市内中心部への直通バス便すらないんですから」
実際、市内にある4か所の観光案内所で英語に対応できるのは新山口駅だけ。市中心部にある他の3案内所は日本語での案内がメインだという。ただ、そこは山口市側も百も承知らしい。
「NYタイムズの選出と瑠璃光寺五重の塔の改修が重なるとは、まったく不運としか言いようがありません。ただ、実物を見られなくも観光客が楽しめるよう、塔のある香山公園内でさまざまな催し物を予定しています。
室町時代に山口を治めた大内氏の歴史がわかる時代絵巻や和歌の展示、さらにはプロジェクションマッピングによる夜間イベント(1月19日~28日)なども行う予定です。インバウンド対応? これから大急ぎで検討することになります」(前出・川井さん)
平成の大合併前までの山口市は人口14万人ほどで、日本一小さくて目立たない県庁所在地と言われてきた。
とはいえ、多くの歴史名跡に加え、市内を流れる一の坂川沿いでは源氏ボタルが群舞するなど、これほど自然と都市機能が調和する景観都市も少ない。NYタイムズが指摘するように、観光ズレしていないその雅やかな佇まいはインバウンド客をきっと満足させるはず。山口市民はもっと自信を持ってもよいのでは?
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班