「また紅白に出しなさいよ!」

計26回の紅白出場のうち、7回も歌唱したという美川さんの代表曲『さそり座の女』。しかし、この曲を紅白で歌えるとは思っていなかったという。

「当時の紅白は歌詞の規制が厳しかったのよ。『大阪の夜』や『おんなの朝』なんて“行為”を連想させるとかで、紅白どころかNHKでは歌唱禁止とされてしまったの。『さそり座の女』だって、歌詞が『地獄のはてまでついて行く』だの『さそりの毒はあとで効くのよ』だの言葉が強いから、ダメかと思ってたの。

でも女心への共感があったのかしらね。2006年から2009年まではそれぞれの年のアレンジバージョンも歌わせてもらって、それはいい思い出ね」

デビュー当時、“美少年”と呼ばれたころの美川憲一さん
デビュー当時、“美少年”と呼ばれたころの美川憲一さん
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しかし、2009年を最後に美川さんは紅白へと出場していない。

「2009年の12月にNHK関係者がウチの事務所にやってきて、私も立会いのもと『いろいろとやっていただきましたが、来年は……』ということだったので、『楽しかったです。ありがとうございました』と言いました。本音を言えば、これでようやく年越しをロスで過ごせるわーって安堵の思いだったわよ」

紅白再出演への思いについても聞いた。

「今年は8月に私の実母と育ての母への感謝を歌った新曲『ふたつの愛』を発売したんだけど、久しぶりにキャンペーンイベントをやったの。77歳にして東京だけでなく埼玉や千葉や京都などのショッピングモールを渡り歩いて歌ったわ。私が言い出したことよ。

私もいよいよ来年の6月で60周年。だからこれまでの曲調とは違った作風の新曲も作っていただくし、大きなイベントも企画してるの。来年は忙しいけど、歌手人生の節目にしたいと思ってるわ。
紅白に未練はないの。ただ、最近は名前もわからない歌手ばかり出ちゃってて重みもないわよね。だから、私をまた紅白に出しなさいよ!」

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班