恒例行事、盃事の配役と手順

事始めでは慶弔委員と呼ばれる幹部らが2日ほど前から段取りを組み、新年の挨拶とともに盃事が行われる。六代目山口組では、ここで司組長が新しく直参になった二次団体の組長と盃を交わす。盃事はヤクザにとって最も重要な儀式であり、どの組でも、組ごとの作法や流儀、伝統に則って重々しく執り行われる。

盃事について自ら媒酌人を務めたことのある暴力団幹部が解説する。

「儀式には最も重要な『推薦人』、後見となる『後見人』、式を見届ける『見届け人』、御神酒が盃にきちんと注がれているかを見る『見分役』、儀式に立ち会う『立会人』などの取持ち人が出席する。
特に誰が推薦人や後見人になるかは重要事項。誰が後見に立つかによって、その人物や盃の重みが違ってくるのは、どこの世界も同じだ」

※写真はイメージです
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そして、「介添役」、口上を述べ司会進行を行う「媒酌人」(「口上人」と呼ぶ組もある)により、儀式は滞りなく進められる。

「組の大小にかかわらず、盃を交わすときは緊張する。大きな組織になると、年によって代替わりする組の数が違う。2つ3つの組ならいいが、仮に8つの組が代替わりとなると、親分の前に置かれる盃は大きな物になる。8人分の御神酒がそこに注がれ、その盃が下げられると、8つの小さな盃に分けられる。小さな盃が8つ並べられ、その間に細い半紙を渡し、大きな盃から注ぐ。

子分の前に盃が置かれると、媒酌人が『盃を飲み干しますと同時に、親分の言葉はすべて飲み込み、承服せざるを得ない掟の世界でございます。今一度、その覚悟をご確認なされ、腹定まりましたら、その盃を飲み干し、懐深くお納めください』と口上し、盃を飲み干し懐にしまう」(幹部)