イラストレーター・永井博による絵本の企画から始まった

大瀧詠一の数ある仕事の中でも、特に有名なのがアルバム『A LONG VACATION(以下ア・ロング・バケイション)』だろう。これは当初、“夏のアルバム”として企画されたものだった。

きっかけとなったのは、CBSソニー出版から1979年7月25日に発売されたビジュアルブック。イラストレーター・永井博の絵本である。そこに『A LONG VACATION』と名づけたのが大瀧詠一で、絵本についてこのように語っている。

後にアルバム・ジャケットとして一世を風靡したあの絵は最初は絵本でした。中の文やこのタイトルを考えたのが私で、本には〈著者(文)大瀧詠一:(絵)永井博〉となっています。

デザインを担当したのが養父(やぶ)正一。このチームで80年代のナイアガラ(大瀧詠一のレーベル)のイメージを作り上げていくのだが、絵本が世の中に出た時点では、まだ音楽との関係はなかったという。

「おっ、ゲット・トゥゲザー!」の一言から始まった「はっぴいえんど」と大瀧詠一の『A LONG VACATION』。伝説のロックバンドと不朽の名作の原風景_4

しかし、1980年の4月13日に『君は天然色』のレコーディングが始まった時、絵本の『A LONG VACATION』とイメージを同期させたアルバムの案が固まってきた。

そして大瀧の32歳の誕生日にあたる7月28日に、6枚のシングル盤と絵本をセットにして発売することになった。