なぜ、人はスマホ中毒になるのか? 脳科学が示すスマホが満たしてくれる「心の三大欲求」とは?
現在社会において生活の重要な一部となっているスマホやインターネット。しかし、スマホを長時間使うせいで、本来やるべきことがおろそかになっていることもあるだろう。なぜ、人はそこまでスマホにハマってしまうのか。また、どうすればその習慣から抜け出せるのか。『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)より、一部抜粋、再構成してお届けする。
『脳を活かすスマホ術』#3
スマホ時間の理想的な減らし方
スマホやゲーム、SNSの時間を少しずつ減らしていくために効果的なやり方が、最新の科学研究で明らかになりつつあります。
基本となる考え方は、まずはスマホを使う時間をゆっくりと減らしていき、その減らした分を、「心の三大欲求」を満たしてくれる他の行為や代替物で補っていくという方法です。
前述のように、スマホは「心の三大欲求」を満足させてくれる。だから、そのスマホの時間を一気に減らしてしまえば、心にすっぽりと穴があいてしまいかねません。
いわば心のバランスが損なわれ、日常生活のウェルビーイングが崩れてしまいかねません。
だから、スマホ時間を抜いた分、「心の三大欲求」を満たしてくれる他のことを生活のリズムに組み入れることが重要です。
効果的なスマホ時間の減らし方のポイントを、順番に見ていきましょう。
まずは、2週間で30分ずつ減らしていく。最初の2週間様子を見て、新しい生活のリズムに慣れてきたら、さらにまた30分減らしていく。
30分というのはあくまで目安なので、15分や20分などと、習慣の変化が大き過ぎない程度に減らしていくのがコツです。先述の通り、脳は少しずつしか変化できません。
次なるポイントは、心の三大欲求を満たす「代わりの行動」を、減らした時間の分だけやること。「つながり」「できる感」「自分の意思でやっている感」を感じられるようなものを選びましょう。
家族や友達と外を歩いてみたり、部屋の掃除をしてみたり。勉強や宿題、誰かを助けてあげるなど、達成感があり、自分ばかりでなく他人のためになることを選びましょう。
そして、スマホ時間の前に、この「代わりの行動」を減らした分の時間だけやってから、スマホの時間を取る。
外を散策するのが「代わりの行動」なら、まずは30分屋外を散歩する。それから前もって決めた時間だけ、スマホやゲーム、SNSをやる、という順序が効果的だと言われています。
最後にもう一つ。新しい行動を習慣にするためのコツとして、「行動のきっかけ(トリガー)を決めておく」という方法があります。頻繁かつ明確なトリガーが、習慣化にはとても効果的です。
「この時間になったら、必ずこれをする」
「ここに来たら、必ずこれをやる」
「こう感じたら、こう行動する」
このように、「どんな時に、どんな場所で、何をするか」を固定化させましょう。トリガーを繰り返すことで脳が反応しやすくなり、新しい習慣が身につきやすくなります。
こうしたスマホの習慣変革を通して、自分が望む通りのスマホ環境を手に入れてゆきましょう。
何よりもポジティブに。そしてアクティブに。
あくまでも能動的なスマホ使用で、持続的なモチベーションを保っていきましょう。
文/星 友啓 写真/Shutterstock
#1『「スマホの使用時間自体とメンタルには相関がない」「記憶力と注意力アップ」「肥満対策」…最新研究で判明した知られざるスマホのいい影響』はこちらから
#2『子どもの学習動画視聴で今すぐやめるべき「字幕」「かわいいキャラクター」「リアルすぎる映像」。集中力を損ない逆効果、と全米トップ高校長が指摘』はこちらから
『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』 (朝日新書)
星 友啓 (著)
2023/10/13
¥891
216ページ
ISBN:978-4022952370
「スマホはどんどん使いなさい!」
スマホをポジティブに使いこなす人ほど、
心の三大欲求が満たされていきます!
スマホは使い方次第。
長所を知ってアクティブに使えば、脳のニューロン回路の強化で、記憶力&集中力もアップします。
〈インプット〉に〈エンゲージメント〉、〈ウェルビーイング〉に〈モチベーション〉。
スマホの利点を最大活用するメソッドをご紹介。
世界の最新研究に基づくスマホ活用術のすべて!
(目次より)
【はじめに】
スマホをポジティブに捉えれば自分が変わる
【序章】天国か? 地獄か? スマホの現在地
問題視されるスマホの影響
エコーチェンバーが起きやすいスマホ
ウェルビーイングをもたらすスマホ
パッシブではなくアクティブなツール
スマホのネガティブキャンペーンの現在
スマホでできる脳を活かす習慣 etc.
【第1章】知られざるスマホのパフォーマンス
「スマホは怖い」は本当か
スマホのメンタル影響をメタ分析すれば
スマホで記憶力アップ
肥満対策や注意力アップにもつながる
SNSが孤独を呼ぶ? 孤独がSNSを呼ぶ?
スタンフォードの「スクリーンノム」研究誕生
「あなたは、スマホで何をしていますか」 etc.
【第2章】スマホ動画は「インプット」の無双の鍵
スマホは「読む」「聞く」「見る」の最強ツール
速読の達人が本当にしていること
人間の脳は読むのが苦手
ちょうどいい早送りの速度
マルチメディア時代のインプットとは
動画の習慣で避けるべきこと
「リトリーバル」という万能策 etc.
【第3章】スマホゲームは「エンゲージメント」の最強ツール
アクションゲームはやはりすごい
「21世紀スキル」アップの人気ゲーム
ゲームと学びの垣根が崩れてきた
子どもにはYouTubeよりもスマホゲームを
ゲームが育てる成長マインドセット
ボードゲームか? スマホゲームか?
「52分やって17分休憩」のススメ etc.
【第4章】スマホのSNSで本物の「ウェルビーイング」を手に入れる
SNSで発信するか、受信するか
不特定多数より仲間への発信
内発的なハマりと、外発的なハマりの大きな違い
やっかいな現代の「やる気」事情
心の三大欲求を満たしてくれるSNS
SNSの科学的ハピネス習慣
「感謝の科学」でできるスマホメンタル術 etc.
【第5章】持続可能なスマホの「モチベーション」
「スマホ依存」には医学的定義がない
アメリカでは「PSU」という呼び名も
「ゲーム依存」「スマホ依存」の9条件
幼児期のスマホは厳重注意
テクノロジーと距離を取る三つの方法
スマホが満たす「心の三大欲求」
スマホ時間の理想的な減らし方 etc.