「いつもと同じ」であることへの安心感が強いのかもしれません
自閉スペクトラムの特性がある子には、CASE6のマンガのように「いつもと同じ」であることへのこだわりが見られる場合があります。親としては、「どうしてこんなに抵抗するんだろう」と思うかもしれません。
でも、誰にでも「いつもと同じ」であるほうが楽だという感覚はありますよね。
例えばパジャマのズボンのように、どちらが前なのかが一目ではわかりにくい衣類を身につけるときには、前うしろを逆に着てしまうことがあります。
それでは生活ができないというわけではありませんが、やはり前うしろが逆になっていたら違和感があり、穿き直します。これも「いつもと同じ」を好むことのひとつの例です。
衣類の前うしろには多くの人が違和感を持つと思いますが、そのような感覚をもっと多くの場面で持つ人もいます。例えば、家具の配置が変わるとモヤモヤする人もいます。
判で押したように「いつもと同じ」を重視する子たち
自閉スペクトラムの特性がある人は、変化に対する違和感が多くの人よりも強いことがあります。その場合、変化の多い生活をしていて、従来通りではない出来事ばかりが続くと、心身ともに疲れてしまいがちです。
幼稚園に通っていれば、毎日同じスケジュール、同じメンバーで過ごせるというわけではないでしょう。子どもはいろいろな場面で、新しい体験をしているはずです。それは変化が苦手な子にとっては、気持ちが忙しくなってしまう日々かもしれません。
新しい体験を積み重ねていくなかで、せめて道順くらいはいつもと同じであってほしい。マンガのお子さんはそう感じているのかもしれません。
ほかにも、「同じ道のほうが気持ちいい」と感じる子や、「いつものルールで行動すると達成感を得られる」という子もいます。感じ方はさまざまですが、「いつもと同じ」を重要だと感じる子もいるということです。
安心感を持ったら、子どもから新しい経験を始める
大人はよく「子どもにはいろいろな体験をしてほしい」と言います。子どもの経験の幅を広げるために、あえて初めての場所や活動に参加させることもあります。「こだわりの強い子だからこそ、変化に慣れさせたい」と話す人もいます。
しかし、「いつもと同じ」を好むタイプの子には、そのような対応が負担をかけてしまうこともあります。初めての体験ばかりで疲弊して、新しい活動への意欲を持ちにくくなる子もいるのです。
子どもが道順にこだわる場合に、変化に慣れさせようとして「たまにはこっちの道から行こう」と誘いかけ、子どもが嫌がったら引き下がる、という接し方をする人がいますが、子どもに明らかにストレスをかけているのであれば、やめたほうがいいでしょう。
結果として同じ道を通るのなら、最初から「いつも同じ道を通る」という姿勢を見せたほうがいいのです。
ルーティンにこだわる子は毎日、判で押したように同じことを繰り返していると、安心感を持ちます。安心してのびのび過ごしていると、むしろその子のほうから違う道順に興味を持つこともあります。
逆説的なようですが、無理に新しい経験をさせないほうが、余裕ができて、視野が広がるという子もいるのです。