介護を理由に仕事を辞めたとしても、介護の負担は逆に増える

介護を理由に仕事を辞めた人の約70%が、経済的・肉体的・精神的な負担は「かえって増えた」と回答しています。

介護で仕事を辞めてしまった場合、自分の収入が途絶えます。介護にお金がかかるのに、自分の生活費でさえままならなくなります。しかも、これからの日本では物価も上がっていきます。

また仕事を辞めて介護を自分の手で行うと決めた場合、肉体的な負担が増すのも当然でしょう。こうして金銭的にも肉体的にも追い詰められた結果として、精神的にも厳しくなっていきます。介護を理由としてメンタルヘルス不調を起こす人は、約25%(4人に1人)にもなるというデータもあるのです。

介護後の再就職、女性は年収5割減なのに介護の負担額は2000万円以上?…介護のための退職が生み出す最悪のループ_4

ビジネスケアラー(仕事と介護の両立)の道が難しいと考え、負担を少なくしたいと思って退職しようとしているなら、それは恐ろしい誤解です。その決断が生み出す最悪のループは、次のようなものです。

(第1段階)再就職先が決まっていないまま退職
(第2段階)想定以上に医療費や介護費がかさむ
(第3段階)生活苦となり、介護サービスを利用するお金もなくなる
(第4段階)介護サービスを受けられないため、自分で介護をする
(第5段階)時間的余裕がなくなり、再就職の選択肢がせばまる
(第6段階)第3段階に戻る(以降、最悪のループに入る)

この最悪のループに入ると、精神的・肉体的・経済的な負担は、時間とともにどんどん大きくなっていきます。そして、一度こうなってしまうと、そこから抜け出すのはとても難しいのです。

2018年6月2日に放送されたNHKスペシャル『ミッシングワーカー働くことをあきらめて…』では、こうした介護離職などを理由として、労働市場への再起ができなくなった人(ミッシングワーカー)が、当時の時点で100万人以上いるという衝撃の事実が明らかにされています(介護離職だけが理由ではない点には注意も必要ですが)。

この最悪のループから抜け出すために必要になるのは生活保護です。一度、ミッシングワーカーになってしまえば、一時的に生活保護を活用し、介護サービスなどを利用しながら、就職先を探すしかなくなります。

しかし、生活保護は、ただ申請すれば簡単に受けられるようなものではありません。今後、日本の財政がさらに悪化していけば、生活保護の認定条件が厳しくなり、受給できたとしてもその内容は貧弱になっていくでしょう。