どんな議論より最優先すべきは子ども

安冨 全ての子どもがご飯をちゃんと食べられる、寝るところがある、殴られない。これを実現する前に、それ以外のことを議論するのは間違っていると思うんです。まず、それを実現してから、教育についても、国防やエネルギーをどうしましょうかと議論したらいいと思う。

 本当にそのとおりで、本来政治行政のすべき 一丁目一番地が子どもの命であり、子どもの未来なんですよ。この一番マストのことすらせずに、しなくてもいいことをやりまくり、加えて不正なことまで手を染めているのが日本の政治です。ええかげんに本来やるべき子どものことをやりましょうと言いたい。

「子どもを守る政治が大人を豊かにする」泉房穂元明石市長がまだ日本を諦めていない理由 泉房穂×安冨歩_3

先ほどもふれましたが、明石市は9年ぶりに自腹で、明石市独自の児童相談所をつくり、職員数を国基準の2倍以上にしたんです。なぜなら、国の基準を守ると子どもが死ぬからですよ。子どもの命を守るという目的達成のために必要な人員配備をしたら、国基準を守れない。2倍要るんです。

安冨 子どもの命を本気で守るには、政治の総力を挙げないとできませんよね。戦争直後の日本には不可能だったけれど、1970年代以降の日本なら実現可能だったと思う。にもかかわらず訳の分からないことをやり続けてきたせいで、少子高齢化で国が滅びかかっている。本気であれば、子どもを守る政治はできるわけですよ。

 日本は何もしなかったのではなく、あえてしないことを選んできたんですよ。30年も40年も、あえてほかの国の半分しか金を使ってこなかった結果が、子どもの貧困であり、子どもの虐待であるわけですから、当然もっと人も増やさなあかんし、お金も一気に増やして体制をつくらないといけない。

さらに、子どもが主人公だという発想の転換が必要です。子どもは親の持ち物ではないと。子どもは親の持ち物であるという日本特有の価値判断が、子どもの貧困や虐待の放置につながっているので、全て親任せじゃなくて、みんなで社会全体で子どもたちを応援するという発想の転換が今過渡期なんです。これが、あるかないかは大違いです。明石の児童手当の申請は子どもです。子ども名義の口座に振り込む。子どもの持ち主としての親に金配るのではなく、子どもに直接渡して、それを申請する子ども自身にも意識を促す。この方針には、本当に多くの市民が意味を理解していて、さすが明石やと応援していただいています。

安冨 その発想の転換は不可欠だと思います。これは、成果でもあるし、明石市の文化にそれを支える力があるんでしょうね。そこの転換ができるならば、全ては簡単に変換されていくはずだと思うんです。