政治家や大手企業の役員でも「メリー氏の前ではタジタジだった」
ジュリー氏のこの例え話で筆者の脳裏に浮かんだのは、2017年のSMAP解散騒動での出来事だ。当時筆者はジャニーズ取材班の一員として主にハリコミ、直撃取材を担当した。
その際のジュリー氏とメリー氏の対応は真逆だった。
ジュリー氏は自宅のマンション前で筆者が声をかけると一言も発することなく自宅マンションへと走り去っていった。翌日、再び声をかけると一目散に送迎車へ飛び込み、筆者を大いに警戒していた。これは後に聞かされたことだが、これまで直撃取材など受けたことがなかったジュリー氏は、あまりのショックに外出を控え、送迎車も変更。追跡を逃れるために一時期はダミー車も用意していたという。
いっぽうのメリー氏の迫力は凄まじかった。偶然、渋谷のデパートで見かけて、そこから出た際に声をかけると、態度が豹変し烈火のごとく怒りだした。名刺を見るなり「アナタの会社も名前も大嫌い」と払いのけ、早口でまくしたて、10分ほど激高すると、スッキリとした顔で愛車のマイバッハに乗り込んでいった。もちろん、こちらの質問などまったく聞いてくれなかった。
その後も手練れの記者とともに取材を試みるも、間髪いれずにメリー氏の怒号が飛び、結局何も質問できなかった。
筆者の実力不足といえばそれまでだが、マスコミ関係者や芸能事務所幹部はもちろん、政治家や大手企業の役員でも「メリー氏の前ではタジタジだった」とジャニーズ関係者も話す。
9月8日におこなわれた会見で、筆者はジュリー氏に「母、メリーさんをどう思うか?」と質問した。ジュリー氏の回答はこうだった。
「メリーは私の母であると同時に、副社長として事務所をずっとけん引して、ジャニーがプロデュースしたタレントを、経営面で支えてきた。2人で本当に一心同体となって会社を運営してきたという長い歴史の中で、ジャニーのことをメリーが守りすぎた。それが今回、調査報告によって私も知らなかったことを知ることになり、本当にお恥ずかしい話ですが、すごくショックを受けております。そういう会話をしてこなかったので、本当に情けない話です」
生前、メリー氏に何も言えない体制をつくってきたのは、ジュリー氏のせいだけではないだろう。実際に彼女と対峙して打ち負かされてきた筆者も、偉そうなことは何一つ言える立場ではない。
この日の会見では、新たにタレントのマネジメントなどを行う会社を近く設立し、東山氏が社長、井ノ原氏が副社長に就くことも発表された。
東山氏は「会社に縛られることなく、タレント自身が方向性に応じて活躍の場を求めていくことになる」と話した。
今度こそ“ライオン”も“シマウマ”もいない、過去のしがらみに捉われない新体制を期待する。
取材・文/鈴木ひろあき
会見撮影/村上庄吾