2023年に入ってEV販売台数が飛躍的伸長

EV市場の変化については「お客様の選択肢にEVが確実に入ってきている」と上野さんは手ごたえを感じている。

「2019年度はEVの販売数は2桁台でしたが、今年は7月時点で昨年年間販売の2,100台という台数をすでに超えており、さらにEVの販売が伸長すると予測しています。これは脱炭素やSDGsなど環境への配慮に対する社会的認知の向上はもとより、数年前に『カーボンニュートラル社会』を目指す政府の指針が定められ、税制優遇や補助金制度などが整備されたことも大きな要因になっています」

国内初の量産型EVモデル「EQC」と代表取締役社長兼CEOの上野金太郎さん
国内初の量産型EVモデル「EQC」と代表取締役社長兼CEOの上野金太郎さん

そんななか、数年かけてEVのラインナップを7車種12モデルまで拡大させているのは「お客様の多様なニーズに応えるため」だという。

「現行の内燃機関モデルは100種類近くあるのに対し、EVの車種が少なければお客さまの選択肢に挙がらなくなってしまう。だからこそ、エンジン車か、それともEVか。お客さまにとって、選択肢の数をどれだけ用意できるかが重要になると考えています」(上野さん)

加えて、電気自動車における「ブランドの顧客の奪い合いはナンセンスだ」と見解を示す。

「現状、日本の自動車市場全体(除軽)で電気自動車を新車購入しているのは、わずか2%といわれています。その中で、他社メーカーとシェアを争うのではなく、『ガソリン車からEVへの乗り換え』に興味を持つ既存のメルセデスオーナーをはじめとしたお客様に、どうEVの魅力やメリットを訴求できるかが大事だと考えています。
すでにメルセデスをお乗りいただいて満足しているお客さまが持つニーズやクルマの使い方に対し、EVでもボディサイズや空間などさまざまな提案を可能にすることで、EVも『選択肢のひとつ』として検討してもらえることを念頭に置いています」(上野さん)