クラフトビールはモテるビール!!?
「多くのブルワリーが、SNSを利用して何かしらの情報を発信しているんです。それぞれの造り手の顔が見えることで推しを応援するきっかけになっていると考えられます」
大手のビールは生産者の顔が見えてくることはあまりなく、思い浮かぶ顔といえば、各ビールのCMに起用されるタレントの場合が多い。一方でクラフトビールは、ビールの仕込みや流通にいたるまで日々の過程を見ることができる。
「SNSで見ていた推しのブルワリーが出店しているビアフェスティバルなどに行けば、推しのブルワー(醸造家)に会いに行って飲めますし、推しのブルワリーが新作ビールを販売したら、全国のお店や通販で買って飲めます。ある種のアイドルやアーティストのような側面ができています」
その人気を裏づけるように、日本国内のブルワリー数は飛躍的に増えている。2010年には全国で約180か所しかなかったが、2016年頃から一気に増え、2020年には約440か所。2022年現在では580か所を超えている。こうした急増するブルワーには20~30代が多く、若い造り手が増えていることも特徴となっている。
「SNSを通じてブルワリー同士が情報交換をしたり、世界中の最新情報も容易く入手できるようになりました。そうしたことで新規参入がしやすくなり、業界の活性化につながっているんだと思います」
クラフトビール発祥の地、アメリカの西海岸では遊び心にあふれたクリエイティブなエリアとしても有名である。そんな地域で誕生した文化だからこそ、缶やラベルのデザインのファッションセンスや味の面白さといった「遊び心」も人気の秘訣となっている。
「クラフトビールの楽しみ方はCDやレコードなど音源をディグる(掘る)行為と似ている気がします」
そう話すのは、クラフトビール漫画『よりみちエール』の著者で漫画家の敦森蘭氏。
「缶や瓶のラベルがお洒落なデザインのものが多くて、レコードのようにジャケ買いしてみたり、コレクションして部屋に飾ってみたり。またシチュエーションや気分に合わせて音楽を聴くように、その日の気分に合わせたものを飲んだりする楽しさがあります」
安くて美味しいビールは確かにある。でも、クラフトビールには美味しさだけでなく、楽しさもある。「このかっこいい缶のデザインのビールはどんな味だろう?」「この変な名前のビールはどんな味だろう?」想像するだけでも楽しさがふくらむ。そのなかのひとつに敦森氏がこんな妄想をしていた。
「ビール、焼酎、ワイン、日本酒、ウイスキー・・・お酒を擬人化させて合コンさせたら一番クラフトビールがモテそうじゃないですか。いい意味で親しみやすいチャラさがあると思います(笑)」
こんなほろ酔い加減の想像がでてくるのもクラフトビールを飲む楽しさのひとつかもしれない。
撮影協力/びあマ神田