闇バイトに応募すると抜けられなくなる仕組み
10代が闇バイトに参加するきっかけには、2つのパターンがある。
まずは、「自分で応募する」ケースだ。
今の10代はアルバイトを探すときにSNSを利用することが多い。マイナビキャリアリサーチLabが2023年5月31日に公表した調査では、SNSでアルバイト探しをしたことがある割合は高校生が50.0%、大学生が30.8%だった。SNSでのアルバイト探しは「タイパ(タイムパフォーマンス)のよさ」がメリットだという。早く楽に稼ぎたい、そう思う心が「即日即金」や高報酬をうたう募集に惹かれるのだろう。
試しに、X(旧Twitter)で「闇バイト」「副業」などのキーワードを検索してみてほしい。「運びのお仕事」「誰でもできる仕事」など、具体的な仕事内容が明記されていない募集が次々と出てくる。
こうした投稿には、警察が「このツイートは詐欺や強盗などの可能性があります」といったリプライを付けて警告しているが、募集の投稿数が多すぎて追いついていない。
最近は、大手求人サイトや求人情報誌でも「受け取り・配送」や「現場系作業スタッフ」を語り、闇バイトを募集しているケースが増えている。運営側としても取り締まりを強化しているが、こちらもいたちごっこだ。
また、SNSなどネットで知り合った人や、友人・先輩から「一緒に働かないか」などと誘われたりするケースもある。10代はまだ幼い面もあり、直接頼まれるとうまくかわせずに引き受けてしまうこともあるだろう。「1回だけなら」「すぐやめればいい」と考える人も多い。
闇バイトは、首謀者の言うとおりに進めると、いつのまにか自分が犯人になってしまう。運転手役など、自分が犯罪に加担していると気づかない場合もあるが、「受け子」や「強盗」を頼まれたときには「これは犯罪だ」と気づくはずだ。それでもなぜ実行してしまうのか。
それは、犯行までに自分の個人情報を首謀者に渡してしまっているからだ。首謀者は、最初は優しい言葉をかけ、仕事前の手続きとして、自分の顔写真や身分証明書、口座番号、住所、連絡先、家族の個人情報などを送るように尋ねてくる。
この時点ではおかしいと感じていなくても、やがて仕事の内容が明かされ、仕事を受けるのを辞めたいと訴える人もいる。しかし、「SNSに個人情報をばらまく」「家族がどうなってもいいのか」など脅迫され、追い詰められたうえに犯罪を実行してしまう。
やりとりはすべて、秘匿性の高い「Signal」や「Telegram」などのアプリで行われる。「Signal」や「Telegram」は通信内容が暗号化されており、相手が読むとメッセージが自動的に消え、サーバーにも情報が残らない。実行役である自分が逮捕されても、指示役や首謀者は誰なのか、たどるすべはない。そもそも闇バイトは、犯罪を実行しても報酬を得られる保障はないのだ。