日本で週刊誌に報じられたら「一発退場」

おそらく今の日本で週刊誌に報じられたら「一発退場」となりそうなエピソードばかりだ。

「スクープ撮! ジョンがお忍びで通う“特殊なサービス”のお店とは」なんて感じの記事が出て、世間に叩かれるわけである。

それゆえに、海外アーティストの自伝などを読むと驚かされる。

その多くが赤裸々。「えっ、そんなこと活字で残しちゃっていいの?」と心配になるレベルのエピソードが語られているからだ。

おそらくは国や地域によってアーティストという存在の位置付けが異なるのだろう。

どんな分野でも、成功したアーティストは突出した才能を持っている。しかし同時に、備わっている才能と同じかそれ以上に、社会的に欠けているところも見える。

欠けているというよりも、その他大勢の人との〝違い〟といったほうが正しいかもしれない。でも、その違いにこそ魅力がある──こんな考えが欧米ではある程度共有されているのではないか。『不道徳ロック講座』を書きながら、そんな風に思った。


文/神舘和典 写真/Shutterstock

『不道徳ロック講座』 (新潮新書) 
神舘和典
日本では一発アウト? 4000人と浮気したミック・ジャガーやナンパ相手を曲モチーフにしたジョン・レノン…スターの名曲に秘められた“不道徳”_4
2023/7/18
880円
224ページ
ISBN:978-4106110047
仲間の妻や恋人に次々と関係を迫る。メンバー全員でファンをホテルに連れ込む。薬物に溺れて入院させられる。金に困って万引きをする……現在の日本人アーティストなら「一発退場」にされかねないエピソードを欧米のロック・スターたちは自ら赤裸々に明かしている。ミック・ジャガー、エリック・クラプトン、ジョン・レノン等、デタラメで不道徳、でも才能あふれて憎めないロクデナシたちの伝説を堪能できる一冊。 
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