支持率回復のため拉致問題には前のめり
仮に茂木氏が財務大臣にスライドされるとなると、党側から岸田首相を支える幹事長の後任人事が重要となってくる。
永田町周辺では小渕優子元経産大臣を大抜擢する案や、安定感のある梶山弘志幹事長代行を起用する案が出回っているが、どれも決め手に欠けているのが現状だ。
また、岸田首相が頭を悩ませているのは人事だけではない。
これまで岸田政権の支持率上昇に寄与してきた、頼みの外交で空振りが続いているという課題もある。
岸田首相は安倍内閣で外務大臣を約5年間続けてきたという経験もあり、外務省と二人三脚で5月に開かれたG7広島サミットの準備に奔走。
ゼレンスキー大統領が来日するというサプライズもあり、支持率上昇に寄与した。
しかし、サミットのインパクトが大きすぎたせいだろうか。岸田首相は通常国会終了後もNATO首脳会議、サウジアラビアなどの中東訪問と精力的に外遊日程をこなすが、支持率が上昇することはなかった。
報道各社が実施する世論調査で発信される内容もマイナンバーカード一色で、むしろ内政問題での不手際が目立っている格好だ。
そうしたなかでも、やはり外交で現状打破を狙っているのか、岸田首相が拉致問題の解決に向けて前のめりになっている。
7月5日には拉致被害者の曽我ひとみさんと官邸で面会し、日朝首脳会談の早期実施に向けて「私直轄のハイレベルでの協議を行っていきたい」と語ったが、時を同じくして日朝の実務者が中国やシンガポールで秘密裏に接触しているとの情報も流れ始めた。
一方で、ロシアによるウクライナ侵攻や、軍備を増強する中国に対応するために日米韓の連携が強化されるなか、北朝鮮は朝鮮戦争の休戦協定調印70年を迎えた7月27日の戦勝記念日にロシアのショイグ国防相を呼ぶなど結びつきを強めており、日朝関係は一筋縄ではいかない情勢となっている。
一刻も早い拉致問題の解決が望まれるのは言うまでもないが、岸田首相が自身の支持率のために功を急げば、足元をすくわれかねないだろう。
最側近のスキャンダルからマイナンバーカード、拉致問題まで内政、外交の両面で課題が山積だが、9月にも行われる内閣改造の時期はどんどんと迫ってきている。
はたして、岸田首相は難題が多い今年の「夏休みの宿題」をきちんと終わらすことができるのだろうか。酷暑の正念場を迎えている。
取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班