日本の希望の光とは 

日本の半導体産業は挽回不能である。特に、TSMCが世界を席巻しているロジック半導体については、日本のメーカーは2‌0‌1‌0年頃の40‌nmあたりで止まり、脱落してしまった。いったん、微細化競争から脱落すると、インテルの例でわかるように、先頭に追い付くのはほとんど不可能である。 

したがって、日本がいまさら、最先端の7~5‌nmを製造することなど(まして2‌nmなど)、逆立ちしたって無理である。ここに税金を注ぎ込むのは無駄である。歴史的に見ても、経産省、産業革新機構、政策銀行が乗り出してきた時点でアウトなのだ。 

では、日本に希望の光はないのかというと、まだ、ある。それは次の3点である。

①ウエハ、レジスト、スラリ(研磨剤)、薬液など、半導体材料は、日本が相当に強力である

②前工程で十数種類ある製造装置のうち、5~7種類において、日本がトップシェアである

③欧米製の製造装置であっても、数千〜十万点の部品のうち、6~8割が日本製である

圧倒的世界シェアだった日本の半導体があっという間に駆逐された理由…過剰品質信仰に潜んでいた罠_5
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つまり、半導体デバイスそのものには期待できないが、各種の半導体材料、前工程の5~7種類の製造装置、そして、装置が欧米製であっても各装置を構成する数千点の部品の内の6~8割が日本製であり、ここに日本は高い競争力を持っている。

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半導体有事 (文春新書)
湯之上 隆
2023年4月20日
1,045円
256ページ
ISBN:978-4166613458
アメリカが中国に突きつけた異次元の半導体規制。このままだと中国の半導体工場はやがて稼働できなくなる。追い詰められた中国が狙うのは、世界のトップ企業、台湾のTSMC――。世界中が半導体製造能力をめぐる競争に駆り立てられているなか、日本は再び失敗を繰り返すのか? 新会社ラピダスのいう、「2027年までに2ナノの最先端半導体をつくる」なんてできっこない!
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