フーディーの定義とは?
その美食の国に足しげく通っているのが「フーディー」と呼ばれる人々です。辞書的には、フーディーは「食通」「グルメ」という意味であると解説されますが、私の解釈ではちょっと違っています。
食通やグルメは「料理の味や料理の知識について詳しいこと。またそれを詳しく知っている人物のこと」(デジタル大辞泉)とされますが、フーディーはそれに加えて、積極的に食べ歩く人々を指します。しかも、食べ歩く場所は、自国のみならず、世界中。なかにはプライベートジェットで旅してまわるフーディーもいるのです。
彼らの存在が明るみに出たきっかけは2014年にスウェーデンで制作されたドキュメンタリー映画『99分,世界美味めぐり』だといわれます(日本公開は2016年)。原題は「Foodies」で、世界各地の名店に足を運ぶフーディー5名を追ったドキュメンタリー映画です。
映画に登場するのは、大手石油会社の元重役アンディ・ヘイラー、タイ・バンコクの金鉱会社の御曹司パーム・パイタヤワット、レコードレーベルの元オーナーのスティーヴ・プロトニキ、リトアニア出身で元スーパーモデルのアイステ・ミセビチューテ、香港生まれのOLケイティ・ケイコ・タムの5人。香港のケイティ・ケイコ・タム以外はすべて富裕層で(彼女も裕福ではないとは思えませんが)、誰もが自分の財布で移動し、食べ歩いているのです。
映画では、ニューヨークやコペンハーゲンの最先端レストランから中国の山奥まで全29店が紹介されていますが、日本からは「菊乃井」「鮨さいとう」「傳」「都寿司」が登場しています。
日本料理と寿司ばかりですが、どこも予約困難な店です。特に鮨さいとうは3つ星の常連でしたが、いまや一見ではまったく予約が取れないため、ミシュラン非掲載となってしまっています。私も開店当初はずいぶん訪れましたが、最近は「さいとうの予約取ってたんだけれど、ひとりキャンセルが出たんで、代わりにいきませんか」と誘われてようやく行ける程度です。
フーディーが登場した背景は、ネットの登場で情報を容易に獲得できるようになったことが一番大きいと思いますが、「非日常的な外食」が増えたことで、外食を楽しむことが「趣味」となったこともあると私は思っています。
その、非日常的な外食が増えた端緒は、スペインにあったレストラン「エル・ブジ」の登場だと私は考えています。