移民の守護聖人たち

初めて彼女たちの存在を知ったのは、メキシコに来てまもない頃だった。着いたばかりで意気込んでいたぼくは、いつもメキシコのおもしろいことを探していた。

そんなときに、ピーンと心惹かれる映像を見た。それは、「パトロナス(守護聖人)」と呼ばれる人たちのドキュメンタリーだった。その姿は衝撃的だった。なにもないジャングルの中を列車が通過する。「野獣」という異名を持つその列車の屋根の上には、たくさんの人が乗っている。彼らは移民だ。

メキシコ南部から出発するその列車に乗って、メキシコーアメリカ間の国境を目指す。轟音とともに、列車は密林の中を駆け抜ける。遮るものはなにもない、一路北へ、北へ。轟音で走り去る列車。その線路脇に立って、列車に乗る移民に食べ物を投げ渡している女性たちがいた。それが、パトロナスの人たちだった。ぼくは、初めてその姿を見たときから、彼女たちの姿が目に焼き付いていた。

アメリカンドリームを夢見る中米移民たちを乗せて走る「野獣列車」。屋根に人が乗り、線路脇からは食料が投げ込まれる衝撃的な光景_2
写真提供/Las Patronas

この人たち、一体なんなんだ……。こんな活動をしている人が、メキシコにいるなんて。一体、なんのために? それに、電車の屋根に乗ってアメリカを目指す移民? なんで、そんなことをする必要があるんだろう?

ぼくは、自分もメキシコに来たばかりの移民ということもあって、この移民をめぐる物語に惹かれていったのである。