「出頭できないなら一緒に死のう」と話す母に
「母さんは撃てない」
その後、政憲容疑者は翌朝まで自宅に籠城した。前出の母親のインタビュー記事によると、籠城中、母親が自首を勧めたが「捕まれば絞首刑になる。そんな死に方は嫌だ」と応じなかった。母親は、「出頭できないなら一緒に死のう」と提案するが「母さんは撃てない」と拒まれたという。「だったら母さんが撃とうか」と持ちかけて猟銃を奪い、その後逃げ出したという。
26日明け方、政憲容疑者は父親から携帯電話で説得され投降した。
動機は被害妄想にしろ、最悪の事件を起こした政憲容疑者は、近くの中野平中学校時代は野球部でレギュラー選手として存在感を見せていたという。
野球部で一緒だった同級生が当時を振り返る。
「僕たちの代は学年120人ぐらいのうち野球部員が16、7人ほどいて、一番人気の部活でしたが、その中でも政憲はキャッチャーのレギュラーとして活躍してました。小学生の頃から地元の少年野球チームに入っていた子が野球部に集まるんですけど、その中でもキャッチャー経験者が政憲ぐらいしかいなかったのもあって、レギュラーが取れたんですよ。特別バッティングが上手いとか、肩が強いとかいうわけじゃなくてね。
性格はちょっとクセがあるというか、独特な世界観を持ってる子でしたね。自分から話しかけるわけではないけど、こっちが話しかけたら、普通の返しじゃなくて、ちょっとひねった返しをしてくれるというか…。別にまったく嫌味なヤツではなくて、くだらない話でもうんうんと頷いて聞いてくれたり、たまにボソッと面白い答えを返してくれるんです。そんな独特なキャラクターがウケて、野球部ではけっこう愛されていたし、クラスの輪の中でも中心というわけではないけど、ふつうに友達は多かったと思います」
独特な愛されキャラだったが、環境によっては通用しないのかもしれない。同級生は今回の事件を受けてそう感じたという。
「事件の報道の中で『人間関係に悩んで大学を中退した』と知って、たしかにあの独特なキャラクターを受け入れてくれない人もいるだろうな、とは思いましたね。クラスに1人や2人はちょっと変わり者の子がいますよね。政憲もそういういわゆる『不思議ちゃん』っぽいヤツなんです」
父親の正道氏(57)も、同中の野球部員だった。
正道氏の同級生が語る。
「今でこそ正道は市議会議員になったり、農薬の会社を営む経営者ですけど、中学時代はごくごく普通でした。成績も中の中ですし、別にクラスの中心にいるようなリーダーシップを発揮する子でもありませんでした。部活は野球部でポジションはサード。お互いに息子の代になると、たまたま僕の息子も政憲くんと同学年で一緒の野球部にも入っていたのでちょくちょく応援には行きました。正道と奥さんもほぼ毎試合応援に来て、政憲君がヒットを打つと、『よし、ナイスバッティング!』と2人で声援を送っていたので、『すごく仲のいい親子なんだな』と感心していました。
あと、正道は2014年に市議になるまでは、年に数回開かれる中野市のソフトボール大会の会長をしていました。『江部』や『片塩』といった、地区ごとにチームを組んでリーグ戦を行なうんですけど、そのときは正道は外野を守っていましたね。最近はジェラート屋さんも始めたようですけど、僕は一度も行ったことないので、最後に会ったのはソフトボール大会ですね」