あなたもいつか「住宅弱者」になるかもしれない

――こうした住宅弱者に、自分も当てはまってしまう可能性はどれくらいあるのでしょうか。

誰にでも住宅弱者になる可能性がありますよ。わかりやすいのは高齢者です。誰もがいつか年を取って、高齢者になりますから。

ここ数年は物件価格が上昇していることもあり、家を購入しない選択をする人が増えているかもしれません。しかしずっと賃貸住まいの場合、いつか「もう更新できません」「新しく借りられる家はありません」と言われる日が来る可能性があります。また、持ち家に住んでいる方が高齢者になって手頃な家に住み替えようとしたときにも、同じように壁にぶつかるかもしれないです。


今や「人生100年時代」で、お元気な高齢者はたくさんいます。しかし不動産会社やオーナーからすると、孤独死は依然消えないリスクなのです。

“住宅弱者”が直面する「同性カップルはトラブルが多いから…」「高齢者は支払いや孤独死の懸念があるから…」何も悪くないのに家を借りられない現実_5
写真はイメージです

また、夫婦が離婚する確率は約3分の1といわれ、今結婚している人がシングルマザー・ファザーになる可能性は低くありません。家を購入していたとしても、自分が子どもを連れて出て行ったとき、その先で家を借りられるかは不確実です。

これから外国籍の人と結婚したり、ケガや病気が原因で障害者になったりする可能性もあります。地震大国なので被災者になることも、仕事をやめてフリーランスになることも。あらゆる可能性があります。

――この住宅弱者問題を解決するため、オーナーや不動産会社がやるべきことは何でしょうか。

家を借りたいという人に対して、真剣に向き合うべきだと思います。空室を抱えているオーナーであれば、候補者を故意に狭めてしまうのはもったいないです。収入の安定性で検討するならまだしも、LGBTQに関しては収入とは何も関係がないですよね。

また、例えば「在日外国人によるトラブルがあった」という噂を聞いたとして「だったらうちも在日外国人には貸さないでおこう」と考えるのは、短慮ではないでしょうか。申し込みに来た方と直接対面した上で「この人はトラブルを起こす危険性が高いのか」を考えたらよいと思います。

住み替えや引っ越しは誰にとっても大変ですが、特に高齢者や障害者にとっては労力が大きくかかるため、一度入居したら長く住んでくれる可能性が高く、優良顧客になり得ます。実際に、LGBTQなど住宅弱者への仲介を専門に扱う不動産会社で、当事者のリピーターや紹介が多く、業績がしっかりと伸びている会社もあります。

不動産事業の成長を考えるなら、住宅弱者問題にしっかりと向き合ってみるのもよいのではないでしょうか。