噂情報からは、プロダクトの真の姿は見えてこない
先ほど噂の種類の1つとして「工場や関連会社から漏れてきた情報を元にした記事」と書いたが、これらは中国の工場から流出した組み立て途中のiPhoneやその部品、製品パッケージの印刷情報を元にして、「おそらく、ここがこういう形になっているのは、こういうことだろう」という憶測であることが多い。
だが、たとえばあなたが使っているスマートフォンについて、他の人に「カメラは○○社のもので、ディスプレイは××社、プロセッサーは○○を搭載」と教えたところで、そのスマートフォンの魅力が十分に伝わることはないだろう。
人は情報を得ると、それだけで何か知った気になれてしまうが、製品で大事なのは、そうした部品をどのように統合して、どのような体験を生み出しているかである。部分的情報の寄せ集めだけでは、そのプロダクトの真価はまったくわからない。
ただ、Apple関連の記事を載せると、それだけで一定数の読者を獲得できる。そして、物欲を刺激するガジェットや面白いアプリ/サービスといったクリックされやすい広告が関連に表示されやすくなり、その結果、広告収入も上がりやすい。だから、Appleの噂情報を扱うブログサイトなどは、絶えずこうした情報を掲載し続ける。
残念ながら、こうしたサイトのほとんどは自らが情報源となっていることはなく、他のサイトで見かけた情報を伝言ゲームで伝えているだけだ。憶測に憶測を上塗りした情報だって少なくない。
いや、Appleが情報源だとしても、必ずしも正しいとは限らない。
5月10日、あるApple女性社員が解雇された。彼女が不用意に自宅で話していたAppleの社内情報を、その兄が噂サイトで流していたことが特定されたのだ。このとき、Appleは情報漏洩の出所を調べるためにあえて本物の情報に嘘の情報を混ぜて社内で流通させており、これが犯人の特定に繋がったという。
Appleの社内情報を事前に流せばネットで大きな注目を集めたり、大きな褒賞を得られる可能性がある。以前には中国のiPhone製造工場で製造中のiPhoneを横流ししていた犯人が特定され、自殺に追い込まれるという悲劇もあった。
ただの憶測記事など、エンターテイメントとして楽しめるものもあるにはある。これらは割り切って楽しむ分にはいいが、噂情報と公式の情報をちゃんと区別できない人は、あまり触れないほうがよい。