ティム・クックCEOは、AR技術そのものは肯定
最後に少しだけARの話に戻そう。
Appleのティム・クックCEOには筆者も何度かインタビューしているが、メタバースなどを含むVRにはあまり関心を示していない一方、これまでに何度かAR、つまり現実空間の上に情報を重ねて表示する技術には「可能性を感じている」と語ってきた。
VRは、たとえば設計中の建物を内側から検証するといった一部のプロフェッショナルには有用であると実証されているが、それ以外のエンターテイメント用途にはなかなか定着していない。最近では社名を変えてまでメタバースへの本気度を見せていたMeta社(旧Facebook)がメタバースではなくAIに舵を取り直すなど、風向きがあまり良くない。
ARに関しても、ビジネスコミュニケーションや教育用途では、いくつか面白いケースが出てきているが、果たして人々が日常的に使うような応用事例が出てくるのだろうか。筆者は疑問に思っている。
ただ、そうした面白い事例を提案し、確立させられる会社があるとしたら、テクノロジーよりも消費者目線でのデザインを重視するAppleこそが筆頭候補だろう。その点では、少し見てみたい気もしている。
文/林信行