このピアノがきっかけでカップルに

日付が変わった頃、今度は黒と白のジャージを着たカップルがやってきた。こちらもトー横キッズらしい雰囲気が漂う。女性は椅子に座ると久石譲の『Summer』を、続いて男性は『魔女の宅急便』の主題歌『海の見える街』を演奏する。メロンにーとさんのように、2人にとってもここは特別な場所のようだ。

歌舞伎町のストリートピアノとトー横キッズ「実家は裕福で国際コンクールに出たことも」「ここに2人で通ううちにカップルに」行き場のない若者たちの特別な場所に_5
元トー横キッズカップル

「特別思い入れがあるわけじゃないですけど、私たち、去年までトー横でたむろしていて、『ピアノ弾ける場所があるから行こうよ』ってこの人(彼氏)に誘われて、一緒に通っているうちに仲良くなったんです」

彼女のカナさん(仮名)はそうぼんやりと話す。

「今ではそれぞれ埼玉の実家に住んでますけど、歌舞伎町でデートするとなったらトー横には行かずにこのピアノを弾きに来ますね。そういう意味ではここは私たちにとって特別な場所なのかも(笑)」(カナさん)

ピアノがつないだ元トー横キッズ同士の恋模様。欲のうごめく歌舞伎町にあって、なんて爽やかな話なのか。

「ピアノを弾くようになったきっかけですか? お母さんに頼んで何度かヤマハのレッスンに行きましたが、先生が厳しくて辞めちゃったんですよね。この人は小5のときにモテたくて個人のピアノ教室に通ってたみたいです。小学生のころから最低ですよね(笑)。
まぁ、これからも2人仲良く、ここにピアノを弾きに来れたらな~とは思ってます」

歌舞伎町のストリートピアノとトー横キッズ「実家は裕福で国際コンクールに出たことも」「ここに2人で通ううちにカップルに」行き場のない若者たちの特別な場所に_6
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それぞれのドラマを抱えた若者たちが、今夜も歌舞伎町に不釣り合いな美しいピアノの音色を奏でている。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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