トー横に流れ着いた元エリートピアノ少女の姿も
4月14日、時刻は23時すぎ。水色のジャージに、サンリオのキャラクター「ハンギョドン」のグッズを身に付けた若い女性がピアノ椅子に座る。弾き始めたのはディズニー映画『ピノキオ』の主題歌『星に願いを』だ。
「小学生のころ、まだピアノを習い始めてすぐに覚えたんです。今でもすごく好きな曲で、前にトー横のみんなでOD(オーバードーズ。市販薬を過剰摂取して意識を朦朧とさせること)したときも、『星に願いを』だけはスラスラ指が動きました(笑)。やっぱり体が覚えているんですかね」
そう語るのは、年齢非公表のメロンにーとさん。繁華街での日常や、ピアノの演奏をTikTokやTwitterにアップするインフルエンサー的な活動をしているが、去年の7月に歌舞伎町にやってきた、いわゆる”トー横キッズ”である。
「自分で言うのもアレですけど、かなり裕福なお家で育っていて、ピアノは5人の先生からレッスンを受けてました。絶対音感もあったし、『ショパン国際ピアノコンクール』や『チャイコフスキー国際コンクール』といった国際的なコンクールにも出たことがあります。
でも私、縛られるのが大嫌いで。『バッハの曲を練習してきなさい』と言われても好きな曲じゃなければ、ブラームスを弾いたり。そんな感じでずっとまわりに反抗してきたから、高校生のころに『私はピアノ演奏者には向いていないな』って思いが強くなって、結局、音大にいくのも諦めてしまったんです」
自由を求めてたどり着いた歌舞伎町。そこで見つけたのがこのストリートピアノだった。
「トー横の友達に教えてもらったから試しに弾いてみたらギャラリーに褒められて。それでうれしくて毎日ここに通うようになりました。この前なんてキャバクラのお姉さんとかキャッチのお兄さんが10人近く集まってきてミニコンサートみたいな状況になったんですよ。
もうルールに縛られてピアノを弾くのはウンザリですけど、このストリートピアノは続けていきたいです。私に“ピアノの楽しさ”を思い出させてくれた大切な場所なので」