「スナック菓子市場は頭打ち」の先へ
新たなブランドの投入により危機をしのいだ湖池屋は、1987年に「スコーン」、1990年に「ポリンキー」、1993年に「すっぱムーチョ」、1994年に「ドンタコス」と、新たなスナック菓子を生み出していく。
親しみを持ってもらうために菓子のパッケージにキャラクターを採用することも。今回の取材で訪れた同社の会議室には、「すっぱムーチョ」のキャラクター「ヒーヒーおばあちゃん」のぬいぐるみが飾ってあった。尋ねると、消費者から届いたものだという。
「ポテトチップスのキャラクター『ムッシュ・コイケヤ』へは、バレンタインにファンの方からお菓子をいただいたこともありますし、年賀状も毎年何通もいただいています。僕への年賀状よりも多いんじゃないですかね(笑)。
ムッシュは主にSNSで活動していますが、心が通じ合うような温かみのあるやりとりを大事にしています」(小幡さん)
消費者との距離の近づけ方も、ロングセラー商品を多数生み出す秘訣だろう。
ところで、新たなヒット商品を生み出すと同時に、ポテトチップスの市場シェアは伸びなかったのだろうか。
「カラムーチョの発売で少しは戻りましたが、シェア自体は今もあまり変わっていません。当社の売上も伸びてはいますが、カルビーさんもかなり伸びている。
ポテトチップスをはじめとするスナック菓子のマーケットはずいぶんと大きくなりましたが、2009年頃から業界全体の商品単価が急激に下がり始めました。前年のリーマン・ショックの影響もあったと思います。
『スナック菓子なんてどれも同じだから安ければいい』という扱いをされる商品になってしまった」(小幡さん)
当時の業界内では、スナック菓子市場は頭打ちだといわれていたという。20年以上大ヒット商品がなかったことも要因で、市場は縮小傾向にあった。
そこで湖池屋は、また新たなブランドを打ち出し、業界に風穴を開ける――。
取材・文/高山かおり
撮影/近藤みどり
写真提供/湖池屋