社会派ドキュメンタリー漫画でも活躍

――吉本さんはこれまで、三陸鉄道関係者への綿密な取材を行った『さんてつ』(新潮社)や、聴覚障害の世界を描いた漫画『淋しいのはアンタだけじゃない』(小学館)のような社会派ドキュメンタリー漫画を描かれています。『こづかい万歳』とはまた作風が少し違いますが、取り組むうえでの違いはありますか?

『淋しいのはアンタだけじゃない』は、書きたかったテーマなのですが、楽しんで書いているのとはちょっと違いました。なんというか使命感のような感じがあったかもしれないです。福祉系の大学に行っていたこともあって、40歳を過ぎたくらいから、一度がっちりマンガで描いてみたいと思っていたんです。 

【漫画あり】重版を重ねてもこづかいは上がらない。「来月どうなるかもわからない漫画家の世界ですから…」福祉系大学を卒業後、映像制作会社のADから漫画家に。吉本浩二の現在_3
『淋しいのはアンタだけじゃない』

――そういったドキュメント性の強い漫画を描かれてるときと、『こづかい万歳』を描いているときでは、吉本さんのメンタルも違いますか?

それはどうしてもあります。『淋しいのはアンタだけじゃない』のときは、医学的な情報が多いので間違いのないように作画中も気が抜けなかったんですが、『こづかい万歳』に関しては精神的なストレスはあまりないです(笑)。

『こづかい万歳』は、自分の作品でいうと『日本をゆっくり走ってみたよ』(双葉社)や『昭和の中坊』(双葉社)と『淋しいのはアンタだけじゃない』をちょうど混ぜたような感じだと思っています。
いままで自分がやってきたことが、ようやくひとつの形になったような感覚です。