コロナ前の華やかさが戻った授賞式
WOWOWの中継では、小西さんと共にSexy Zoneの中島健人さんが現地レポートを担当。積極的にスターにインタビューをする姿も印象的だった。
「彼はレッドカーペット取材にめちゃくちゃ向いていると思いました。というのも、本人がスターだからでしょうか。僕のようなジャーナリストは、スターに声をかけるときに割と申し訳ないなと思い、遠慮がちになってしまうんです。でも彼は、全然そういう感じがない。
話を聞きたいから声をかける。つまり対等なんですよね。純粋に映画が好きだし、英語の発音もとても上手。あのポジティブさは素晴らしいと思いました」
感動的なスピーチも多く、授賞式も温かな雰囲気に包まれていた。
「(ウィル・スミスのビンタ事件があり)去年はあまりに後味が悪かったですからね。視聴率を稼ぐために、あえてシニカルなことをやったり、パロディをやったり、アカデミー賞授賞式の演出にはいろんな歴史があります。
ですが、映画を作った人たちを讃え、受賞した人のスピーチが一番の魅力になる、シンプルで古風な授賞式の素晴らしさを再確認しました。アフターパーティも超満員で、出席者はみんな楽しそうにしていました。コロナ禍前の華やかなパーティが戻ってきたと思います」
映画ファンにとっては、トム・クルーズが欠席だったことが残念だが。
「実はアカデミー賞の前に行われた全米監督協会賞で、ジャド・アパトー監督が司会を務め、トムの身長をいじり倒したことが話題になりました。アカデミー賞でも、生放送というコントロールできない状況で笑いの餌食になる可能性があった。それが出席を取りやめた要因になったと言われています」
とはいえ、アカデミー賞の司会を務めたジミー・キンメル側に言わせると、いじる予定は全くなく、トム・クルーズのために考えた3分間のネタがあったそう。披露されなかったことは残念だが、『エブエブ』チームの魅力によって、素晴らしい授賞式になったことは確かだ。
一番優れた作品ではなく、好かれた作品が選ばれるようになったことで、映画ファンは今後、アカデミー賞をどのように捉えればいいのだろう。
「『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)や『クラッシュ』(2004)、『ハート・ロッカー』(2008)などもそうですが、選び方が変わる以前から、作品賞を受賞した映画が歴史に残る傑作ばかりかというと、実はそうでもないんです。しょせん、人が選ぶものなので、アカデミー受賞作=傑作という考えはやめて、あくまで参考にしてみるのではどうでしょう。
受賞しなかったとしても、最終的にノミネートされた10本が、その年を代表する作品であることに違いはありませんから」
文/ロードショー編集部