「入管にいる外国人は油断ならない人が多い」
現在、ペドロは仮放免という立場にありながら、違法な就労をしている。本人いわく、「働かないでどうやって生きていけっていうんだ」とのことだ。本稿の冒頭で、私は入管の元職員の次のような言葉を紹介した。
「入管にいる外国人は油断ならない人が多い。いちいち真剣に取り合っていたら、こっちが足元をすくわれることもあるんです」
それを聞いた時、私はこの言葉を非常に乱暴な物言いだと感じた。これまで私は入管で苦しんでいる罪のない難民の取材なども数多くしてきた。入管の軽率な対応によって、ウィシュマさんのような事件を起こすことは絶対に避けなければならない。
一方で、今回のペドロのような入管体験を聞くと、また別の印象を抱かずにはいられない。
どちらが正しいかどうかではなく、問題は「外国人の在留問題」としてあらゆる人間をひとまとめにして対応しようとしている縦割りの構造にあるだろう。まずはその構造自体を見直さなければ何も変わらない。
取材・文/石井光太