#2 特別な選手ではなかった山本由伸はいかにして球界ナンバーワン投手になったのか?

NPB史上初となる、2年連続〝投手四冠〟の偉業

現在、「NPBナンバーワン投手は誰か?」という問いは、愚問に近い。少しでも野球を知っている人間なら、そのほとんどがこう答えるだろう。

山本由伸――。

宮崎県・都城高校から2016年ドラフト4位で指名を受け、オリックス・バファローズに入団。高卒1年目から一軍デビューを飾ると、2年目の2018年にはセットアッパーとして試合に登板。4勝2敗1セーブ、ホールドを記録する。

本格的に先発に転向した2019年は試合の登板で8勝6敗、防御率1.95をマークし、最優秀防御率のタイトルを獲得。2020年はコロナ禍で短縮シーズンとなったが試合の先発で8勝4敗、防御率2.20、奪三振149で奪三振王に。

そして、2021年には試合、18勝5敗、防御率1.39、奪三振206という異次元の記録を叩き出し、チームのリーグ優勝に貢献するだけでなく、最多勝、最優秀防御率、最高勝率、最多奪三振の投手四冠を達成。投手四冠はチーム史上初の快挙だった。また、同年には侍ジャパンとして東京五輪に出場し、金メダルを獲得している。

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さらに翌2022年、試合、15勝5敗、防御率1.68、奪三振205を記録し、プロ野球史上初となる2年連続投手四冠に輝いてリーグ連覇、日本シリーズ制覇も達成。

沢村賞、MVPも2年連続で受賞するなど文句なしの結果を残し続けている。

150キロを超えるストレートに加え、フォーク、カットボール、スライダー、シュート、カーブという多彩な変化球を投げ分け、そのどれもが超一級品。球速、変化球のキレ、制球力といった投手に必要なファクターをすべて兼ね備えている。

2022年シーズンを終了した時点で、まだプロ6年目の24歳。

誰もが『NPBナンバーワン投手』と認めるバファローズのエースだが、ドラフトでの指名順位が4位だったことからもわかるように、アマチュア時代は決して全国に名を轟かせるような投手ではなかった。