今でも布団で寝ることができない理由

「PTSDなどを薬で抑えているので日常生活を送れています。ただ薬は自分でも恐ろしくなる量で。常に多量の薬を服用している状況です」

さらに、虐待は就寝時に行われることが多かったため、現在も布団で眠ることができない。
布団と虐待の記憶が結びついているからだ。

「机に突っ伏して寝ます。休まっているかはわかりませんが、考え得る中では一番休まる方法なので。睡眠はいつも2~5時間ほどです。」

後遺症には波がある。悪化したときは、失声症を発症したこともあったという。

「ある日急に声が出なくなって。しばらく全く声が出ませんでした」

普通では考えられないような症状に悩まされているものの、穏やかに淡々と語る姿からは、もうそれが日常で、本人にとってはそれが「当たり前」なのだということが伝わってくる。

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写真はイメージです

そんな中でも学生生活を送れるのは、勉強が楽しい、ということ以外にも理由がある。

「頼れる親類もいない状況で、もう後に引けないっていうのが大きいですね。私には休学という選択肢もないし、帰る家もないので。でも、本来ならば体調が優れない中、無理に大学で学ぶ必要もないと思っていて。高校を出て、一旦おやすみの時間が取れて、治療を受けたりして、準備ができてから大学に通うことが許容されるような、誰もが勉強したいと思ったときに勉強がしやすい環境になるといいのかなと思っています」

大学では特定の分野ではなくまずは様々な分野を学ぶ。そのため、リナさんは大学以外で行われている学会にも積極的に参加している。関心を持っているのが、心理学、その中でもトラウマの領域。

「性暴力被害の対応に関心があります。被害を受けた直後に適切なケアを受けられるかでその後のトラウマの出方が変わってきます。初期段階での対応ができるようになりたいなと思っています。医学部に進んだのは、成績が安全圏といわれたのが大きかったのですが、今は医師になりたいと明確に思うようになりました」