クロスジェネレーションで次の未来へ
阪本氏は、団塊の世代が健康維持に励み、消費者として経済を牽引するとともに、介護や福祉などの労働力を自分たち自身も一部担うことで、世代間の対立や格差を緩和できるのではないかと説く。さらにその際に重要になるのが、年齢を問わず交流して相互理解を深める「クロスジェネレーション」だという。
「未来ビジョン研の調査で『大人世代が応援することで、自分たちではなく、若者世代から新しい文化が生まれることは望ましい』と答えた団塊世代の70代は、全年代のなかで最も高い88.7%という結果でした。実は『団塊世代は若者世代を応援したい』と思っているのです。
コロナ後の旅行観光でも『そこで働く若者や女性にプラスなるのであれば旅行観光や飲食をしようと思う』団塊の70代は、全年代のなかで最も高い79.1%で、割引だけでなく『若者支援』になるのなら旅行観光をしたいと思っています」
「団塊の世代は若者文化を創設した世代ですから、若者と共通した感覚を有していますし、分かり合える余地は十分にあるでしょう。例えば、昨年、お亡くなりになったアニソン歌手の水木一郎さんも団塊の世代ですが、アイドルのももいろクローバーZと親交が深く、たびたびコラボレーションしていました。
こうしたクロスジェネレーションの機運を、マスメディアなどを通じて広く普及していくのが、『2025年問題』を前にした日本に求められていることだと思います」
もちろん、「2025年問題」を回避するためには、当事者である団塊の世代自身にも大いに奮起してほしいところだ。
「現在の日本の最大の社会課題『社会保障費』を解決できるのは、まさに、すでに行動を起こしている団塊の世代なのです。団塊の世代は“自分たちの健康づくりはより若い世代を助けることだ”という気持ちを持ち、彼ら自身の手によって解決できることが望ましいといえます。そうすれば、団塊の世代は人生のファイナルステージで、もう一度『社会の主役』になることができるはずです。
もしそうなれば、世代間でリスペクトし合いながら社会を支えていく希望の道が、開けるのではないでしょうか」
2025年まで2年足らず。団塊の世代と現役世代はこのまま衝突への道に進むのか。
それとも、ともに支え合い、苦境を乗り越える道を選ぶのか。
日本社会が岐路に立たされている。
#1『団塊による「2025年問題」が目前に。75歳になっても「俺たちが社会の主役!?」団塊世代とはどんな人たちなのか』はこちらから
取材・文/島袋龍太