子供を望めない所得層を置き去りにする政府

さらに深掘りすると、子育て世帯支援は誰をターゲットにしているのか、という点です。かつて、階級闘争といえば「労働者と資本」でしたが、現在は「都市部エリート層と低所得労働者」の構造もできつつあります。

都市部のハイスペック夫婦は子育て支援の所得制限をなくすことを望んでいますが、一方で子供を産めること自体、贅沢と感じる人たちもいます。格差が広がると対極にいる人が増えるため、見ている世界が異なっていきます。そして、国はどちらをサポートしたいと思っているのかということです。

本当は子供を産みたいと望んでいたが、所得の問題で子供や結婚を諦めた人を想像してみてください。その人からすれば、子供を産める環境にいる人を優遇し、その財源として自分の税金や保険料の一部を利用されるかもしれないということです。これは納得できることなのでしょうか?

住宅ローン控除も同様で、家を買える人間を優遇し、家を買えない人間には何も優遇する制度がないということを気持ちよく思わない人が少なくないということです。

日本は韓国同様、婚外子が少ない社会です。つまり、未婚率を上げない限り出生率は上がらないという指摘は多くの識者がしています。
とはいえ、結婚するかどうかは個人の自由であるという意見がありますので、それよりは万人受けする子育て世帯支援を選ぶ政府の気持ちもわからなくはありません。

異次元の少子化対策をするのはいいですが、韓国のようにならないことを願うばかりです。

取材・文/井上ヨウスケ