コーディネーターとコレオグラファーは違う

宮沢氷魚にベッドシーンの“振り付け”をし、鈴木亮平にゲイの所作を指導…映画『エゴイスト』が日本映画で初めて導入した画期的な仕事とは_6
© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会
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──今回はSeigoさんによる振り付けが入りましたが、よく考えると、これまで映像で描かれてきたセックスシーンは、俳優に動きを委ねる部分も多かったということですよね。もちろん監督の演出があるとはいえ、俳優への負担は大きいだろうなと感じます。

ミヤタ廉 コレオグラファーでいえば、今回のように男性同士だけでなく、女性同士や男女のセックスシーンでも必要になっていくかもしれないですし、もっと広がっていけばいいなと思っています。

別の作品でインティマシー・コーディネーター(※)の方とお仕事をしたときに、亮平さんが聞いたらしいんです。「『エゴイスト』のような同性愛を扱う作品のときに、コーディネーターはどういうお仕事をするんですか」って。

やっぱり、コーディネーターとコレオグラファーは似ているようで絶対的に役割が違うので、「タッグを組むことが、これからは最強なのかもしれない」とおっしゃっていたそうです。

※セックスシーンやヌードシーンの撮影が安心・安全に行われるように、監督と俳優の間に入って意見を調整し、現場でサポートを行う職業

──完成した作品をご覧になった感想は?

ミヤタ廉 原作愛が強いので、編集の段階から「あのシーンを削る意味がわかりません!」なんて、生意気にも監督に意見を言ったりもしたんですが(笑)、完成したものを見たときにはとにかく胸がいっぱいで、言葉にできなかったですね。たとえ、なにも知らず見たとしてもきっと同じだった気がします。何度見ても、そのときに置かれている自身の状態で、浮かぶ景色は違うと思います。

Seigo 僕も原作は大好きで、本を読んで泣いたのは人生で初めてでした。ミヤタさんがおっしゃったように、何度も見ないと本当の意味で理解できないくらい深い作品。意外な意味が隠されているシーンも多いですしね。いつか解説本が出てほしいと思うくらい。

ミヤタ廉 ネタバレになるので詳しい前後の描写は避けますが、浩輔がある歌を口ずさむシーンがあるんです。何を歌っているか見ただけではわからないのですが、実は松田聖子さんの「風立ちぬ」なんですね。

元々は台本にないシーンなのですが、あのシーンが加わったことで、浩輔の抱く感情が絶妙に表現されたと思います。全体的に多くをセリフで説明する作品ではありませんが、細部にまで意味をきちんと持たせているシーンがたくさんあるので、ぜひ注目してみてください。



取材・文/松山梢

『エゴイスト』(2023) 上映時間:2時間 日本
出演:鈴木亮平 宮沢氷魚 阿川佐和子
原作:高山真「エゴイスト」(小学館刊)
監督・脚本:松永大司
脚本:狗飼恭子
音楽:世武裕子

ファッション誌の編集者として働く斉藤浩輔(鈴木亮平)は、友人が紹介してくれたパーソナルトレーナーの中村龍太(宮沢氷魚)と出会う。シングルマザーの母・妙子(阿川佐和子)が病気のため、龍太は高校を中退して仕事を掛け持ちしながら生計を立てていると語る。次第に惹かれ合い、恋に落ちたふたりは幸せな日々を送っていたが、ある日、浩輔は龍太から別れを告げられる。龍太には母にも言っていない秘密があった……。

© 2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

配給:東京テアトル
R15+

2023年2月10日より、全国ロードショー

公式サイト:www.egoist-movie.com
Twitter/Instagram:@egoist_movie