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クラミジア、梅毒、バラ疹も増えている

12月10日新宿歌舞伎町のビル内にて、「子どもの支援団体CPAO(しーぱお)」が催した「ごはんとお医者さん〜出張医療相談会」が行われた。炊き出しだけでなく、医師や看護師といった医療関係者が実際に診察や簡易的な治療を現場で行なうアウトリーチ活動だ。支援活動に「集英社オンライン」も同席し、“しんどい子どもたち”の現実に直面した。

「コロナ禍でしんどい子どもが増えました。もともと不安定な雇用下にある親が、仕事を失って家にいると、理不尽に当たられたり、虐待されたりすることもある。それで自宅が居心地のいい居場所ではなくなった子どもは街に出ていく。でも、その街には搾取する大人もいる……。だから、そんな子どもたちに、世の中にはロクでもない大人だけじゃないんだよと思ってもらえたらいいなと活動をしています」(CPAO代表・徳丸さん)

リスカ・案件・DV・受け子…「親からは自覚のない虐待」「いつかはここを卒業したいけど…」支援者・“大阪のおかあさん“が見たトー横キッズ“しんどい子どもたち”の現実_1
徳丸ゆき子さん
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CPAO代表の徳丸ゆき子さん(52)は元々大阪で支援団体を発足し、関西圏の生活困窮世帯の子どもと親に対する生活支援事業を行なってきた。
大阪にも「グリ下」というトー横と同じような場所があり、そこに集まる子どもたちが、新宿のトー横や名古屋のドン横といった“界隈”に夜行バスを使って出かけていくことからトー横を知ったのだという。そして、全国から助けを求める子どもたちのためにそういった“界隈”を2020年頃から巡ってきた。

そんな中で2021年11月に起きたのが、「トー横キッズリンチ殺人事件」である。(【トー横・暴行殺害事件から1年】ホームレスを土下座させ7時間暴行した犯人は「手加減をしていた」。キッズ支援者の“同志”が裁判傍聴で知った“違和感“と“しんどい子どもたち”のリアル参照)。この痛ましい事件を機に、トー横キッズと本格的に関わらなければ、と徳丸さんは決意をした。

以降、徳丸さんは100人の子どもたちから話を聞き、どんな支援を受けられたら嬉しいと思うかをリサーチしてきた。すると、どの子も口にしたのが「暴力がない、安心して寝れる場所が欲しい」だったという。

「『夏は野宿ができるけれど、冬の寒さはつらい』と子どもたちは話していました。本当は東京にもシェルターを用意したかったのですが、予算面で厳しく実現にいたっていません。これから冬になると、インフルエンザもあるし、コロナもまた流行る可能性が高い。子どもたちの間で性感染症も増えています。
これまでにクラミジアや梅毒でバラ疹が出ている子を医療に繋いだケースもあります。暖かい場所で食事の提供もしながら、お医者さんに診てもらえたらと思って、この『ごはんとお医者さん〜出張医療相談会』のアウトリーチを始めました」(徳丸さん)

ごはんの提供を開始したのは17時。その1時間ほど前に「広場」と呼ばれるシネシティ広場に足を運んでみると、すでに10名ほどの子どもたちが集まっていた。
どの子も地雷系ファッションと呼ばれる黒づくめの服に身を包み、厚底の靴を履いている。壁に寄りかかって座り、おしゃべりをするなど穏やかな雰囲気である。しかし、周囲にゴミが散乱し、椅子が持ち込まれているなど普通の公道のような場所では見られない光景もままある。
歌舞伎町が闇に包まれていくに従って、広場に人の数が増えていく。炊き出しが始まる17時すぎになると、キッズは20名近くまでに膨れ上がっていた。

リスカ・案件・DV・受け子…「親からは自覚のない虐待」「いつかはここを卒業したいけど…」支援者・“大阪のおかあさん“が見たトー横キッズ“しんどい子どもたち”の現実_2
広場に集まってた“キッズ”と支援者

「お腹すいた〜。今日、1食も食べてない」「お腹グーグーなってる」と嘆く子どもたち。「今、ごはんの無料提供をやっているんだけど、食べに来ない?」というスタッフの声かけに一瞬、戸惑いを見せるものの人懐っこい笑顔で「行く行く」と返事をし、4人が連れ立って炊き出し会場に向かうことになった。
炊き出し会場へと足を運ぶ間、グループ内の最年少、14歳のA子ちゃんに話を聞いた