Dくんは60代のおじさんに誘われて…

子どもだけでなく、大人も出入りするのがトー横だ。
「これまで恐い体験はなかったか?」と問いかけると、笑顔で「いっぱいある」と応えた。

「この間、60代くらいのおじさんに話しかけられて、最初は楽しく話していたけど、『交番の裏ならバレないから行こう』って誘われました。……エッチなことされそうになったんですよね。僕、まだ童貞で『初めてがおじさんはヤダ』って逃げました。まわりの人たちも守ってくれました。

(特殊詐欺の)受け子で知り合いが捕まったこともありましたね。ここにいると、そういう誘いがよく来るんですよ。でも、たとえ受け子とかやってもお金を貰えないこともあるみたいで。だから僕は何もやってなくて、金欠ですね。
トー横に来るのに交通費と飲食で毎回2千円くらいかかります。これまで親戚とかからもらって貯めてきた小遣いを切り崩してでも来るのは、トー横が1番楽しいから」

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広場に集まる“キッズ”と支援者

飲酒、薬の過剰摂取で酩酊する子どもたち

22時も過ぎた頃になると、広場にはさらに多くの人が集まってきていた。子どもだけでなく、ホームレス風の中年女性や、ナイトワークの雰囲気を持つ男性もいる。
夕方の穏やかな雰囲気とは打って変わって、混沌としたムードが漂い始めている。
飲酒以外にも、風邪薬を大量に飲んだりする少年少女たちがやってきた。中にはリストカットをして服を血まみれにしたり、風邪薬の過剰摂取により吐き気を催してもどす子も……。
誤ってカミソリで手をざっくりと切ってしまい、大量に出血していた少女もいた。

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手を切ってしまった少女
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22時半になり、スタッフたちが食事提供の場所へ戻ろうとした時だった。3人の少年少女たちが声をかけてきた。

「あの、まだご飯やってますか?」

炊き出し会場に来るのはこの日3回目だと話すEくんとFちゃん。そして、その友達のGくんだった。

「どこか泊まる場所ないかなあ」と独り言のようにつぶやくEくんは壮絶な日々を生きていた……。

♯2へ続く