〈広島・バラバラ遺体〉逮捕された男(31)の母は泣き崩れ、モデルの姉は…。被害者は認知症の母親の老々介護中に恋人と失踪かと思いきや、切断された遺体となって…
広島市佐伯区で2年前に失踪した警備員の植木秀俊さん(当時70歳)の切断された遺体が複数ヶ所で見つかり、近隣から“猫好き”で知られたパート従業員の渡部大地容疑者(31)が死体損壊・遺棄容疑で広島県警に逮捕された事件で、植木さんは認知症の母親と二人暮らしだったことがわかった。植木さんは母の介護だけでなく、近隣でも面倒見のいい人物と評判で、同年代の「彼女」と付き合っていたことも知られていた。
「誰なんじゃお前は」と怒鳴りつけたそうです
社会部デスクが複雑な事件をこう解説する。
「植木さんは渡部容疑者の祖母と親しく、互いに顔見知りでした。3人の住まいはともに佐伯区内の近隣で頻繁に行き来していたとみられ、渡部容疑者は2021年10月29日から翌30日にかけて祖母宅で植木さんの遺体を切断して一部を敷地内に埋め、一部を周辺の沿岸に投げ捨てたとして今月1日に逮捕されました。捜査では植木さんと渡部容疑者は事件当日も祖母宅で居合わせていたことがわかっており、渡部容疑者が殺害に関与した可能性もあるとみられています」

大きな魚(ワラサ)を釣り、歓喜する植木さん(本人SNSより)
植木さん宅の近くに住む住民男性がこう語る。
「植木さん自身は芯の通った感じのいい方で、3、4年前にここに引っ越して来られたころから『認知症の90代のお母さんの面倒を見ている』とおっしゃっていました。2年ほど前にテレビの共同アンテナが崩れて道路にはみ出しかかっていたことがあり、このときも植木さんが『人に迷惑がかかったらいけない』と率先して撤去作業に取り組んでくれました。ただ、撤去費用に40万円かかり、それを地域の数人で負担することになった際に植木さんは『支払いは来月まで待ってほしい』と言っていたので、生活に余裕があるわけではなかったと思います」
植木さんが地域の世話役を買って出たのは、それだけではなかった。男性が続ける。
「地域で伸び放題になった草を刈らなければならなくなったときも、当初は80万円くらいの見積もりだったところ、植木さんが『そんなにお金かけんでもいける』と他の業者に掛け合って半額くらいで話をまとめてきました。そんな人だったので、行方不明になった当初から『認知症のお母さんを置いて出ていくはずがない』とみんなで話し合っていました。しかし、私の知人が5、6回植木さんとその彼女と一緒に会ったことがあり、『植木さんは彼女と一緒に逃げたんだ』と言い出したことがあったんです」
この知人が聞いた名前や特徴から、「彼女」は渡部容疑者の祖母だったと見られる。当時は60代に見えるほど若く、合鍵を持っていて植木さんの家にもよく来ていたようだ。
「それがちょうど2年前くらいの話です。植木さんは『彼女も一緒に住んで母親の面倒を見てくれる』と同居を計画したのですが、認知症のお母さんは何度説明しても彼女が家に来る度に『誰なんじゃお前は』と怒鳴りつけたそうで、結局あきらめたようです。そういう経緯があったので、植木さんが行方不明になった当初、知人は『彼女と逃げたんだ』と言っていたのです」

事件現場となった渡部容疑者の祖母の自宅(撮影/集英社オンライン)
結果的に植木さんは母親を放置して逃亡したわけでも、「彼女」と駆け落ちしたわけでもなかった。姿を消した2年前に何らかの原因で命を落とし、「彼女」の家でその孫にバラバラに切断され、海や「彼女」の自宅の庭に遺棄されていたわけだ。
あの息子が何かしたのかぐらいに思っていたのですが…
その渡部容疑者は祖母宅からほど近い、佐伯区皆賀の集合住宅に住んでいた。近くの住民男性によれば、母親と二人で暮らしていたようだ。
「何度かすれ違ったことがあるので、渡部さんなら顔は知っていますけど、正直、普通の男性という以外の印象は残っていません。ここの家賃は5万円台で、私は10年近く住んでいますが、渡部さんはそれ以上前から住んでいて、60代ぐらいの女性と2人暮らしだと思います。渡部さんは町内会費をずっと払ってないので何度かウチの者が取り立てに行きましたが、払ってもらってないと聞いています。お金に困っていたのか、ただ払いたくないのかは知りませんが、そのぐらい近所付き合いも全くないお宅でしたね」

中学時代の渡部容疑者(知人提供)
近くに住む女性もこう証言した。
「息子さんは30代で、お母さんは60代に見えました。何度か2人一緒のときにすれ違うこともあったし、仲は良さそうでした。しかし息子さんの方は挨拶をしても何の反応もないし、下を見て目も合わそうとしない。性格も暗い感じだし、あまりいい印象は持っていません。私が自転車置き場でちょっと自転車をどけてもらおうと『ごめんなさい』と声をかけても、下を向いて『うん、うん、うん』みたいにうなずいているだけでした。最後に見たのはその自転車置き場で夏の時期だったので、短パン姿でしたね」
この女性は県警が渡部容疑者のマークを始めた様子を、目撃していた。このころからふだん見かけない、渡部容疑者の父親らしき人物も姿を見せていたという。
「逮捕される前の週の土曜日の夜11時ごろに、スーツ姿の刑事さんぽい人がマンション(集合住宅)の入り口前に立ってあたりを見回していました。その近くに捜査車両みたいな車が2台止まっていて、そこからお母さんと、もう1人同年配の男の人も降りてきて、2人ともめちゃくちゃ泣いていたんです。この旦那さんと思しき男性はふだんは見かけたことがありませんでしたが、2人はマンションに帰っていきました」

渡部容疑者が母と住んでいた集合住宅(撮影/集英社オンライン)
その翌日、女性は、渡部容疑者の父親と思しき男性が集合住宅の前で自分の車に乗り込もうとしているのを、母親が外階段の踊り場から見送る姿も見ていた。
「お母さんはまた涙をぼろぼろ流して泣きながら『バイバイ』と手を振っていて、旦那さんと思われる男性は親指を立てると車に乗って行ってしまいました。前の日は警察が来ていたので、あの息子が何かしたのかぐらいに思っていたのですが、その次の週にバラバラ遺体の事件で逮捕されたというニュースが出て、そうこうしていたらテレビの記者がウチまで取材に来たので、この事件だったのかと驚きました」

小学生の頃の渡部容疑者の卒業写真(知人提供)
涙を流したのは親だけではない。逮捕のショックを受けてか、都内で暮らすモデルの姉も憔悴しきっているという。
「(息子が)おらんくなった、おらんくなった」と騒いだ母
2年前に発生していた事件の着手がここまで難航した理由はまだ定かではないが、容疑者と祖母、被害者を巡ってはこうした複雑な背景があったことは確かだ。前出の植木さん方の近くの住民男性がこう語る。
「2年前に行方不明になったときは、植木さんのお母さんが『(息子が)おらんくなった、おらんくなった』と家で騒いで発覚したようです。それまでは逆に、お母さんが何度も徘徊して、植木さんが『どこか勝手に行って警察から職場に電話がきたこともあって大変じゃ』と心配していたんです。だから、あの人に限ってお母さんを置いて出ていくはずがないとは思っていましたが、彼女との間で何かトラブルでもあったのかなと考えたこともありました」

佐伯警察署(撮影/集英社オンライン)
植木さんが姿を消した後、認知症の母親を植木さんの妹が迎えに来たという。
「しばらくは自宅からお母さんの荷物を運び出しに来られていましたが、最近はめっきり見かけなくなっていたところでした。事件の報道を見たときは『こんなことがあるんじゃ』とびっくりしたけど、やっぱりお母さんを置いていなくなってたわけじゃなかったんだって思いました」
母親思いなだけでなく、世話好きで近所でも頼られていた植木さんと渡部容疑者の間に何があったのか。捜査はまだ始まったばかりだ。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班