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「誰なんじゃお前は」と怒鳴りつけたそうです

社会部デスクが複雑な事件をこう解説する。

「植木さんは渡部容疑者の祖母と親しく、互いに顔見知りでした。3人の住まいはともに佐伯区内の近隣で頻繁に行き来していたとみられ、渡部容疑者は2021年10月29日から翌30日にかけて祖母宅で植木さんの遺体を切断して一部を敷地内に埋め、一部を周辺の沿岸に投げ捨てたとして今月1日に逮捕されました。捜査では植木さんと渡部容疑者は事件当日も祖母宅で居合わせていたことがわかっており、渡部容疑者が殺害に関与した可能性もあるとみられています」

大きな魚(ワラサ)を釣り、歓喜する植木さん(本人SNSより)
大きな魚(ワラサ)を釣り、歓喜する植木さん(本人SNSより)
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植木さん宅の近くに住む住民男性がこう語る。

「植木さん自身は芯の通った感じのいい方で、3、4年前にここに引っ越して来られたころから『認知症の90代のお母さんの面倒を見ている』とおっしゃっていました。2年ほど前にテレビの共同アンテナが崩れて道路にはみ出しかかっていたことがあり、このときも植木さんが『人に迷惑がかかったらいけない』と率先して撤去作業に取り組んでくれました。ただ、撤去費用に40万円かかり、それを地域の数人で負担することになった際に植木さんは『支払いは来月まで待ってほしい』と言っていたので、生活に余裕があるわけではなかったと思います」

植木さんが地域の世話役を買って出たのは、それだけではなかった。男性が続ける。

「地域で伸び放題になった草を刈らなければならなくなったときも、当初は80万円くらいの見積もりだったところ、植木さんが『そんなにお金かけんでもいける』と他の業者に掛け合って半額くらいで話をまとめてきました。そんな人だったので、行方不明になった当初から『認知症のお母さんを置いて出ていくはずがない』とみんなで話し合っていました。しかし、私の知人が5、6回植木さんとその彼女と一緒に会ったことがあり、『植木さんは彼女と一緒に逃げたんだ』と言い出したことがあったんです」

この知人が聞いた名前や特徴から、「彼女」は渡部容疑者の祖母だったと見られる。当時は60代に見えるほど若く、合鍵を持っていて植木さんの家にもよく来ていたようだ。

「それがちょうど2年前くらいの話です。植木さんは『彼女も一緒に住んで母親の面倒を見てくれる』と同居を計画したのですが、認知症のお母さんは何度説明しても彼女が家に来る度に『誰なんじゃお前は』と怒鳴りつけたそうで、結局あきらめたようです。そういう経緯があったので、植木さんが行方不明になった当初、知人は『彼女と逃げたんだ』と言っていたのです」

事件現場となった渡部容疑者の祖母の自宅(撮影/集英社オンライン)
事件現場となった渡部容疑者の祖母の自宅(撮影/集英社オンライン)

結果的に植木さんは母親を放置して逃亡したわけでも、「彼女」と駆け落ちしたわけでもなかった。姿を消した2年前に何らかの原因で命を落とし、「彼女」の家でその孫にバラバラに切断され、海や「彼女」の自宅の庭に遺棄されていたわけだ。