9月29日、旧統一教会との関係や女性記者へのセクハラ疑惑について、十分な責任を果たさず批判を浴びてきた細田衆院議長が辞意を示したという一報が永田町を駆け巡った。
「夏には熱中症で入院したと報じられたり、脳血管に異常が見つかり、たびたび治療を続けてきましたが、議長の職を続けられないと判断したのでしょう。
しかし、ここにきて『政治家としては元気』と、議長を辞任しても次期衆院選にも出馬する考えを周囲に伝えています。重要な公務で欠席を繰り返していたのに、議員は続けられるといっても、有権者の理解を得られないのでは」(全国紙政治部記者)
80歳超えの“老害議員”たちに翻弄される政界。79歳細田議長が辞意も次期衆院選に出馬意向のなぜ。二階氏、麻生氏、小沢氏ら高齢議員の去就は?
細田博之衆院議長(79)が体調不良を理由に、任期途中で議長を辞任することになった。しかし、「政治家としては元気」と語り、次期衆院選にも出馬する意向を周囲に示しているという。政界を見渡すと、細田氏のほかにも二階俊博元幹事長(84)、麻生太郎副総裁(83)など、世間的にはとっくに引退していてもおかしくない年齢の議員が実力者として君臨している。年内の衆院解散もささやかれるが、「アラサー」ならぬ「アラ傘(傘寿)」政治家たちの去就は……。
重要行事を欠席、国会で自分の席がわからずウロウロ…

細田博之衆院議長(本人Facebookより)
永田町には、ほかにも高齢議員が多くいる。
二階俊博元幹事長(84)は、車に乗る際に周囲の人が支えたり、国会の議場で自分の席がわからなくなった姿が目撃されたりと体力面が不安視されるが、次回衆院選で地元和歌山の小選挙区が3から2になっても、自身が小選挙区の候補者として残った。
「近く息子が跡を継ぐとされていますが、地元の御坊市長選に落選した長男と、二階氏の秘書を務め、後継の最有力と目される三男の仲は険悪。後継者はいまだに確定していません」(二階派関係者)
麻生太郎副総裁も次期衆院選で引退し、長男に地盤を譲るとも取りざたされたが、自民党関係者は「岸田首相・麻生副総裁・茂木幹事長の三頭体制が崩れると、政権運営もがたつきます。永田町では、首相は年内に解散したがっているが、麻生氏が止めているともっぱらの噂。今後もまだまだ影響力を発揮するつもりでしょう」とみる。
現職、最多当選の立民・小沢氏にも批判の声
実力者として政界に君臨し続ける80代の政治家を複雑な思いで見ているのは、永田町の現役議員だけではない。世襲での後継をめざす息子たちにとっても、父の引退時期は一大関心事だ。
「麻生氏の長男は40歳目前。二階氏の三男は40代半ば。当選回数がモノを言う永田町ですから、初当選から大臣就任までに10年はかかるでしょう。そこからさらに重役を狙うとなると、あまり時間はない。
そのため、年を重ねてから初当選した世襲議員には、周囲の『お父さんも幹事長をやったのだから』『親子2代で総理に』といった期待とは裏腹に、焦りもあるのです。

二階俊博元幹事長(公式サイトより)
岸信夫元防衛相の長男、岸信千世氏は31歳で初当選を果たし、HPに家系図を載せたことや、演説に中身がないことなどに批判が集まりましたが、それでも若くして当選した分、今後のキャリア形成に余裕がある」(自民党議員)
一方、野党第一党の立憲民主党にも、現職で最多の当選18回を誇る小沢一郎氏(81)がいる。
「かつて自民党幹事長を務めた威光は見る影もなく、前回衆院選では小選挙区で初めて落選し、比例復活しました。
最近では党の中堅・若手議員とともに次期衆院選での野党候補の一本化を求めたり、自分のグループを立ち上げたりするなど、『反泉』の動きも見せています」(全国紙政治部記者)
そもそも小沢氏は、2021年に枝野幸男代表(当時)が衆院選敗北の責任をとって辞任した後の代表選では、現在の泉健太代表を支援していた。

小沢一郎氏(公式サイトより)
「このときに、小沢氏は泉氏が代表になれば役職に就けてもらうという約束をされていたのですが、泉氏の周囲の反対もあり、小沢氏の登用は立ち消えに。そこから泉氏とは距離を置くようになりました」(同)
ただ、立憲内からは小沢氏の動きに対し、「本来は小選挙区で勝たなければいけないベテランなのに、小選挙区では落選し、党の貴重な比例復活の枠を一つ使った。私だったら恥ずかしくて、表立った動きなんてできない」(ベテラン議員)との批判の声が出る。
引退しても言いたい放題のOBに嫌気も
引退してもなお、大きな影響力を持つ元政治家も。
森喜朗元首相(86)は10月3日の北國新聞のインタビューで、森氏が内閣改造や派閥の人事に介入しすぎだという批判に対し「岸田総理からどうでしょうかと聞かれるからお答えしたということです。自ら口を挟んでいるわけではありません」などと弁明。
さらに、自身が嫌う下村博文氏について「新国立競技場を中途半端なものにした文部科学相として絶対に許せません」と相変わらずあけすけに語っている。
こうした森氏の姿勢には反発も出ており、9月には「事実上の森派」とも言われる安倍派から土井亨衆院議員が退会。
だが、残りの99人は多かれ少なかれ不満を抱えながらも派閥に残っている状態だ。

森喜朗元首相(首相官邸ホームページより)
「永田町では与野党問わず、引退した議員がしょっちゅう議連に顔を出したり、現役の党幹部が重要局面でOBに根回しに行ったりもします。
現在、80歳を超えている議員たちが引退したとしても、その影響力はしばらく残り続けるのではないでしょうか」(全国紙政治部記者)
世間一般ではそういった人物は“老害”と揶揄されるが、果たして政界は……。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班