未成年者への性犯罪率は、教員が一般人の1.46倍に

子どもに対する教員らの相次ぐわいせつ事案を受けて議論が進むのが、子どもと接する職場に性犯罪歴がある人物が就職できないよう、採用時に性犯罪歴を確認する「日本版DBS」制度について。
政府はこれまで、民間の塾やスポーツクラブには採用時の性犯罪歴確認を義務づけない方針で調整していたが、与党内外から懸念の声が続出。
10月中旬にも召集される臨時国会への日本版DBS法案提出は見送られる方向となった。

一方、愛知医科大学の大橋渉准教授は「そもそも日本版DBSだけでは、子どもへの性犯罪は防げない。子どもへのわいせつ事案を起こした人物で、過去にも同様の事案で検挙された人は、ほぼいない」と指摘する。

大橋准教授自身も、学生だった30年ほど前から、アルバイト先の塾や在籍していた教員養成大学で、子どもに対するわいせつ事案を目の当たりにしてきた。その実情から「小児性愛者が教育現場に入り込むのを防がないといけない。小児性愛障害を診断する方法を開発し、この障害を教員免許状の『欠格事由』に位置づけることができないかと考え、研究を進めています」と語る。

女子児童への盗撮行為等で逮捕された元・四谷大塚講師の森崇翔容疑者(撮影/集英社オンライン)
女子児童への盗撮行為等で逮捕された元・四谷大塚講師の森崇翔容疑者(撮影/集英社オンライン)
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文部科学省によると、2018年度には年間282人の公立小中高の教員がわいせつ行為などで処分され、2017年に関しては被害者の約半数は自校の児童・生徒だった。2021年度も同様の教員の数は215人で、9年連続で200人を上回っている。

「わいせつ行為等で処分された教員は、公立小中高校などの教員全体の約3000~4000人に1人なので、教員や教育委員会関係者には、『問題を起こす教員はめったにいない』と考える人もいます。しかし、分析を進めると、驚くべきことがわかってきます」と大橋准教授。

文科省のデータと人口動態データを用いて、教員とそれ以外の集団における性犯罪率を比較したところ、教員による18歳以上の被害者に対する性犯罪率は0.99倍と、教員以外の集団ではほぼ同率であったのに対し、18歳未満の被害者に対する性犯罪率は、それ以外の集団の1.46倍だったという。