「投げ銭」とは動画の生配信やライブチャットといったサービスで、配信者に応援金を支払う課金機能のこと。山口恵理子容疑者が利用していたのは、中高生を中心とした若者に人気の日本最大級ライブ配信アプリ「ミクチャ」(旧MixChannel)。
アカウントのプロフィール欄では「リスナー29歳どこにでもいそうな会社員女子」と、26歳もサバを読んでいた。社会部記者は言う。
<客のカード情報を盗み投げ銭>元JTB電オペの女(55)が詐欺容疑で逮捕。推しは女性ライバー、顧客の被害総額は800万円超え
9月7日、愛知県警中村署は大手旅行代理店JTBの電話オペレーターだった山口恵理子容疑者(55歳)を電子計算機使用詐欺容疑で逮捕した。今年5月から6月にかけて顧客のクレジットカード情報を悪用し68万円分を騙し取り、自身の推しのライバー(生配信者)に「投げ銭」をしていた疑いだ。SNS投稿写真から山口容疑者の歪な愛の形に迫る。
逮捕当日にも推しへの絵馬写真を投稿

推しのライバーとの2ショット(本人SNSより)
「山口容疑者は今年5月から6月にかけて、ミクチャでの投げ銭で必要なアプリ内コインを購入する際、他人のクレジットカード情報を入力して計68万円分を騙し取ったとされています。
本人は容疑を否認しているようですが、警察の調べではそれ以外にも25人の顧客のカード情報を使って総額870万円分のコインを騙し取ったと見られ、余罪を捜査中です」
山口容疑者が勤めていたのは名古屋市中村区の「JTB旅物語」中部販売センター。この部署で電話オペレーターをしていた山口容疑者は、決済の際に口頭でクレジットカード情報を伝える仕組みを悪用して犯行に及んだとみられている。

地元・名古屋の熱田神宮で絵馬に推しのオーディション1位を祈願した山口容疑者
山口容疑者は逮捕された9月7日にもSNSで、「モデルオーディション絶対1位」というコメントとともに、推しの女性ライバーへの熱い思いを記した絵馬の写真を投稿していた。

推しへの直筆の手紙
また、別の日には推し宛の直筆の手紙を投稿。
「〇〇ちゃんをささえていこうって決めた日から(中略)ドキドキしてねれない日々が続いてるし、ウトウトしてもミクチャの夢をみてしまいます」「ラジオ配信でも『あれ? 元気ないな?』って気付いてしまう程私は心配です…」という文面からも相当入れあげていることがわかる。
今年7月には、30枚近いチェキを購入した様子や、イベントで撮った2ショット写真なども投稿していた。
美容への関心も高かった山口容疑者
一方、ディオールの数量限定リップスティックケースを購入したり、ネイルも頻繁に変えていたりと、山口容疑者は推し活だけでなく、美容への意識も高かったようだ。

ハイフにネイルなど美容への関心も高かった山口容疑者
それにしても、55歳の女性がなぜ若い男性ではなく女性ライバーに大金を費やしていたのか。ミクチャの運営会社、株式会社DONUTSの元社員はこう話す。
「投げ銭機能をもっとも多く利用するのは30代から50代。女性が女性を推すことはけっして珍しくなく、投げ銭の男女比が半々という女性ライバーもいるくらい。
山口容疑者は2分間で8000P(8000円相当)もの投げ銭をしていたこともあり、めちゃくちゃ“太客”ですよ。このクラスの太客がいるのは売れっ子ライバーでも5人に1人くらい。まさに推しを支えていたひとりだと思います」

イベントでのチェキ撮影では30枚近く購入することもあったようだ
犯罪ジャーナリストの諸岡宏樹氏は、投げ銭トラブルについてこう解説する。
「伝統芸能の世界で観客、特に中高年女性が役者に『お花』と称した“おひねり”を渡す文化があるように、投げ銭のようなシステムは昔からありました。
ただし、現代の投げ銭はスマホやパソコン上で操作して渡すのでお金の重みを感じにくく、感覚が麻痺しやすい。
そのため、未成年が親のクレジットカードを勝手に持ち出して投げ銭に数百万円も使い込むようなこともあり、同様の事例は2021年ごろから増加傾向にありました。
大きな問題なのは、山口容疑者の場合はそれが顧客のお金だったこと。それでも一度タガが外れると後戻りもできず、捕まるまで止められない状態になっていたのでしょう」

山口容疑者のX(旧Twitter)アカウント。違法なお金で投げ銭をされても推しは幸せではないだろう
他人から横領したお金で推された女性ライバーも、いい迷惑に違いない。
※「集英社オンライン」では、推し活や投げ銭のトラブルについて、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。
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@shuon_news
取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班
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