20代男性の性交渉未経験率は43%

2022年7月、東京大学の研究者が20~49歳の男女8000人に行なったオンライン調査によれば、20代男性の性交渉未経験率は43%だった。

この調査結果に対し、中年男性たちからは「一昔前の童貞率はもっと低かった」、「最近の若い者はだらしない」なんて苦言を呈す声も聞こえてきそうだ。

かつては「男からガツガツとアプローチをかけるのは当たり前」、「セックスを経験してこそ甲斐性のある男」といった肉食系的な恋愛論・セックス論を掲げる男性が多かったからだ。だが、令和の今、そういった既存の概念に辟易としている若者も多いだろう。

しかし、「実際のところ、今も昔も童貞率は変わらない」と独身研究家・荒川和久氏はいう。

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実は、童貞率は30~40年前と変わらない

「実は現代の童貞率は、80年代後半の数値とほぼ変わらないんです。国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の『出生動向基本調査』にある、18~34歳の独身男性の性体験未経験率を見てみると、2021年が44.2%なのに対して、1987年は43.1%とほぼ同じ程度。

今の若者にふがいないと文句を言っているであろう50~60代ぐらいの男性も、若いころは今の若者と大差はなかったワケです。しかも80年代は“恋愛至上主義”という価値観が浸透しており、男女の恋愛が盛んだった時代。にもかかわらず、草食化が進んだといわれる現代と未経験率は変わってないのが事実です」(荒川氏、以下同)

では昔とさほど未経験率が変わらないにもかかわらず、なぜ童貞が増えたと騒がれるようになったのだろうか?

「原因はデータの切り取り方にあります。前出の社人研のデータによれば多くの年代で2005年が最も低く、18~34歳の男性の性体験未経験率は31.9%という調査結果が出ています。2021年や1987年と比べると、その時期だけ総じて10%以上も童貞率が低かったわけです。

つまり、1987年から2005年にかけて未経験率が一旦下がり、2005年を“底”にして再び上がってきて、現代は80年代後半程度の数値にまで戻った状況ということです。ですから童貞数増加を叫ぶ論者やメディアは、2005年のデータを基軸に未経験率が上がっていると主張しているだけ。

ちなみに2005年は携帯電話の普及や出会い系サイトの増加に伴い、むしろ男女の性の乱れが問題視されていた時代ですので未経験率が低いのもうなずけます。

もちろん2005年と比べれば未経験率が上がったのは間違いありませんが、長期的なスパンで考えると童貞の数は今も昔も変わっていないというのが事実なんです」