“使い込まれた日常”が置いてある201号室

バードホテルはわずか5部屋だけの小さなホテル。入り口にあるバードバス(鳥の水飲み場)が目印だ。私が好きな201号室の窓からは由比ヶ浜の海が見え、小さなテラスにはオリーブの鉢植えがある。ホテルから由比ヶ浜の海岸までは歩いて2〜3分。ここにいると海には慣れっこのはずの私でも、潮風の匂いと波音で解放された気分になる。

今プロットを作っている新しい小説は、バードホテルの201号室で最初の一文を書き始めるつもり。あのホテルに漂う雰囲気を物語に活かしたいからだ。ここには使い込まれた日常が置いてある。

由比ヶ浜の潮風と波音に解放されるバードホテルで味わう、素材が活きる美味_1
新しい小説の一文を書き始めるのはここ、201号室から
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長いこと夜はひっそりしていた鎌倉界隈だが、この10年で気の利いたバーが次々にできて、最近は個性的なホテルが次々にできている。かつて友人たちは鎌倉に遊びに来ても終電を気にしていたが、最近は「どこかいいホテル取って」というようになった。私はたいていバードホテルの201を予約する。海の気配はもちろんのこと、交通の便が良くて清潔で値段も手頃。ミニマムなのだけれど、質素とは違う引き算することの贅沢さを感じさせてくれる。築45年の施設をリノベーションして、ホテルに仕上げた。発酵した時間と最新のセンスが溶け合って、特有の個性を醸し出している。

由比ヶ浜の潮風と波音に解放されるバードホテルで味わう、素材が活きる美味_2