「しゃべっただけで拍手が起きる。そこ違うんだけどなって…」ネルソンズがキングオブコント決勝で感じていた違和感
「予選と決勝のウケ方が違い過ぎて、ちょっと戸惑いましたね」と語ったのはネルソンズの和田まんじゅう。他にも多くのファイナリストたちが口にしていたキングオブコントの“独特の雰囲気”と、すでに中堅トリオとなったネルソンズのコントに対するスタンスが明かされる。
ネルソンズインタビュー♯2
「予選と決勝のウケ方が違い過ぎて…」

ネルソンズ。吉本東京所属。2010年結成。青山フォール勝ち(中央)、和田まんじゅう(左)、岸健之助(右)はともにNSC東京校14期生出身
——決勝の出番順は前回、2019年に初出場したときに続いて、また2番目でした。やはりトップよりはいいにせよ、2番目も避けたいところですよね。
岸 嫌でしたね。
青山 でも、僕らが初めて出たとき、トップバッターのうるとらブギーズさんが2位通過でファイナルラウンドに進んでいるんですよ。最終的に2位になって。
――ただ、2017年に上位3組がファイナルラウンドに進む現行方式に改められてから、22年も含めると過去6年で、1、2番手でトップ3に残ったのは、そのうるとらブギーズが唯一なんです。3番手だと、ファイナル進出者は過去2組いるのですが。
青山 そうなんだ、うるとらブギーズさんだけなんだ……。
——今大会は80点台が全体を通して1回しか出ないなど、かつてないほどの高レベルな争いになりました。ネルソンズもオール90点台で、点数は466点。まだ2組を終えた段階とはいえ、その時点でトップに立ちました。
青山 ムード的に、この点数じゃ越されるだろうなとは思ったよね。ここから、まだまだいい点が出るんだろうな、と。
――手応え自体は、どうだったのですか。
和田 ウケてないわけじゃないんですけど、みんなウケてたんで。
岸 誰もスベッてない。
——いろいろな方が、同じような感想を漏らしていました。

「みんなウケてたんですけど…」と予選と決勝の雰囲気の違いを語る和田(左)と青山
和田 予選と決勝のウケ方が違い過ぎて、ちょっと戸惑いましたね。決勝は軽いフリみたいなところで、拍手が起こるので。「いや、そこ違うんだけどな……」って思いながら。僕もそうなんですけど、いぬとか、ビスブラ(ビスケットブラザーズ)とか、キャラクターが強いコント師は、しゃべっただけで拍手が起こるんですよ。
「ウケるんだったら何でもやります」
——今大会は、観覧者が拍手をするシーンが目立ちました。演者サイドからすると、その拍手の受け止め方が難しかったそうですね。
青山 テレビで観ていた人は「めっちゃウケてたな」って言うけど、やっている方は、そこまでウケてた感覚がないんです。
和田 拍手があった、ぐらいの感覚なんです。なんかハマり切ってないなという感覚でやっていました。とはいえ、重いのも嫌なんですけど。
青山 重いよりは、まだいいか。
――そこは本当に難しいんでしょうね。お客さんの反応次第で、ネタの見え方って、まったく変わってしまうところがありますもんね。でも、ここぞというところでは、やはりドッとウケている印象はありましたが。
和田 笑い声が起きたところは、そうですね、ウケてる感じはありましたね。
——和田さんはセリフの抑揚が、いつも独特じゃないですか。恋敵役の青山さんが花嫁を奪いに来て「あんた誰だよ!」と逆ギレされたときも、怒り狂うわけでも絶望するわけでもなく「お前が誰だ?」とどこか挙動不審な様子で返す。あれが妙にリアルで、思わず笑ってしまうんですよね。どうしたら、あそこの演技にたどり着けるのですか。
和田 吉本だからでしょうね。劇場が多いぶん、めちゃくちゃステージに立てる。その中で、いちばんウケた言い方をしているだけです。
岸 ウケりゃいい。
青山 ウケるんだったら何でもやります。

昨今はコント愛を語る芸人が多い中、「ポリシーよりも、ウケれば何でもいい」と語る岸
――そのスタンスは、一つの正解ですもんね。
和田 僕らはポリシーとかないんです。コント愛みたいなのもない。自分らに対する愛はありますけど。コントは自分らがウケて人に褒めてもらうための道具みたいなものなんです。だから、僕の中で、このセリフはこう言いたいとか、こう言うべきだみたいなものはまったくないんです。
和田まんじゅうが坊主にした理由

——あそこのシーンは「お前こそ誰だよ!」ってキレそうなものなのに、「お前が誰だ?」って最後、ちょっと語尾が上がるんですよね。
和田 ネタ合わせじゃ絶対出てこない言い方なんですよ。お客さんの前でやらないとわからない。あそこも笑いが起きている感じはありましたね。
岸 拍手だけでなく、笑いも起きている組はやっぱり点数が高かったですね。そこは点数に如実に表れていた。審査員の方々も会場のウケ具合をきちんと感じ取っていたのだと思います。
——やや話は逸れますが、今大会、準優勝したコットンのきょんさんは坊主頭にして、それで笑いの量が大きく変化したと話していました。和田さんも、あるときを境に坊主頭にして、似たような変化があったと話していたことがあったと思うのですが。芸人は、やはり見た目の工夫が大事なものなのでしょうか。
和田 どうなんですかね……。あるかもしれませんけど、たぶん、気持ちの問題じゃないですか。
——頭を丸めると、吹っ切れるということですか。
和田 いや、僕の場合で言うと、その前にもう吹っ切っていたんですよ。このままじゃまずい、と。俺が引っ張るんだ、というスイッチを入れたところだった。たまたまその直後に、ライブの企画コーナーで坊主になったというだけで。だから、正直なところ、坊主にしたからみたいなのはないですね。
青山 そうだったのか。狙って坊主にしたわけじゃないのか。
——和田さんを見ていると、喜劇役者として天賦の才を授かった人なんだろうなと思っていましたが、そういうターニングポイントがあったんですね。
和田 腹をくくって笑かそうとできるかどうか。最後の最後は、そこだと思いますね。

取材・文/中村計 撮影/村上庄吾
関連記事
新着記事
せっかくのサプライズバースディを台無しにされ、中川が…!?


【漫画】「僕のことや、僕たちの間の個人的なことを作品に書くのはしないでほしい」某マンガのセリフに感銘を受け、コミックエッセイ執筆封印を決意するも…(3)
現実逃避してたらボロボロになった話(3)


