「賞レースでは他の芸人のネタも『ウケろ!』と思って見てます」決勝初出場のコットンがキングオブコント2022で見せた究極のポジティブ思考
ここ数年で「大会のレベルが飛躍的に上がった」と言われるキングオブコント。2022年のファイナリストたちの貴重な証言から、その舞台裏を浮き彫りにしていくシリーズ連載。今回は初の決勝進出ながら、抜群のコンビ力&演技力で会場を沸かせたコットン。
コットン インタビュー♯1
初の決勝で2位に躍進

コットン。東京吉本所属。2012年結成。ツッコミ・ネタ作り担当の西村真二(左)とボケ担当のきょん(右)は、ともにNSC東京校17期出身
――キングオブコント2022では初めての決勝出場で準優勝と大躍進でした。大会ではトップバッターから高得点が続き、6番手のや団が470点とこの日の最高得点。コットンの出番は、その直後でしたが、このときの心境はいかがでしたか。
西村 僕は正直、(や団の点数を)超えられると思っていたので、生意気な言い方になりますが、温めてくれてありがとうぐらいに思っていました。
――ウケた後はやりにくいという芸人もいますが、ある程度、点が出た後ぐらいの方がいい、と。
西村 僕は、タイガー・ウッズ理論なんで。タイガー・ウッズって、前の人がパターを打ったとき「入れ」って言うらしいんですよ。「その後、俺も決めてやるから」って。僕も前の人がスベれなんて絶対思わないタイプなんです。むしろ「ウケろ」って。「でも、俺らはもっとウケてやるから」と。
――究極のポジティブ思考ですね。
きょん 僕もまったく一緒です。
西村 ウソいうな。
——ウソなんですか。
西村 これ、もう500回くらい話しているんですけどね。僕ら、賞レースとかのとき、ちょっとしたおまじないみたいな言葉を使ってるんですよ。
きょん 心を落ち着かせるためにね。
西村 僕らは普段、渋谷の「ヨシモト∞ホール」っていう常設劇場に出演しているんですけど、そこで「ワラムゲ!」っていう定期ライブがあるんです。そこでライブをするのは、もう、呼吸をするぐらい当たり前になっているので、1ミリも緊張しない。なので、本番前、袖で控えているときに、きょんがふざけて「確認していい? このライブ何だっけ」みたいな。そしたら僕が「ワラムゲ、ワラムゲ」って言ったり。
きょん とにかく楽しもう、って。

ネタ作りを担当する西村。コットンの頭脳だ
西村 それでキングオブコントの決勝も「今日のライブ、ワラムゲにしては豪華すぎねえか?」「松っちゃん(松本人志)も来てるらしいぞ」みたいにふざけてたんです。そうしたら、煽りV(紹介VTR)が終わりかけて、いよいよというときに、後ろできょんが「あとは俺に任せろ」って言ったんです。顔も完全にキマっちゃってて。あれはゾクッとしましたね。
コント中、きょんの手がブルブル震えてて
――おまじないが全然、効いてないと。
西村 さっきまで「ワラムゲ、ワラムゲ」って言ってたのに、もう普段通りじゃないって言ってるようなもんじゃないですか。それに悪いけど、この1年、ネタをがんばって書いてきたのは俺で、どういうつもりで言ってんだよ、と。
そうこうしているうちにネタがはじまったんですけど、僕は最初のセリフを言ってからも、頭の中できょんの「俺に任せろ」がまだ響いてました。

ボケ担当のきょん。意外と緊張しい⁉
――コットンの1本目は『証拠』と呼ばれるネタでした。浮気の証拠を隠滅する「浮気証拠バスター」を演じるきょんさんが、浮気をしてしまった西村さんの家にやってくるところから始まるんですよね。
西村 そうです、そうです。で、僕に続いてきょんが「お邪魔します」って入ってきて、警察手帳のような身分証明書を提示するんですけど、その手が、ブルブルブルブル震えてて。僕、思わず笑っちゃいました。10秒前に「あとは俺に任せろ」って言ってたやつがですよ。「任せられるか!」と思って。
——きょんさんは出番前、急にちょっと変なエンジンがかかってしまったのですか。
きょん わかんないんですよ。ほんとに。なんであんなこと言っちゃったんだろう。1本目は僕のパフォーマンス次第というネタでもあったので、グッと力が入っちゃったのかもしれませんね。本番中も、自分では震えてるっていう意識はなかったんですけど、今思うと、1本目は死ぬほど緊張していましたね。
——見ている限り、そこまで緊張しているようには見えませんでしたし、大きなミスもなくできたんですよね。
西村 まあ、いいパフォーマンスは出せました。
「91点」にえっ?ってなって…

――審査員の評価は、はっきりと割れましたね。最初の2人、山内健司さんと秋山竜次さんはそれぞれ「96」と、その日の最高点を付けました。
西村 僕はこの時点で、オール96の480(点)を想像したんですよ。
——高得点が続きそうな雰囲気はありました。
きょん これはいけると思いました。
西村 このままいけば(470点の)や団さんと10点差つけたぞ、って思ってたんですけど、3人目の小峠(英二)さんは「91」で。えっ? ってなって。司会の浜田(雅功)さんが「91っ!」って読み上げる声も、もうほとんど聞こえてませんでしたね。
――4人目の飯塚悟志さんも「91」でした。
西村 あのときは、もう焦点も定まらない感じで。声もどんどん聞こえんくなっていって。「終わったな」と。でも、最後の松本さんが「96」って出してくれて。あれで、生き返りました。浜田さんの「合計は!」の前に、や団さんと同点だって、すぐにわかりました。
――頭の中で計算して?
西村 はい、僕、暗算得意なんで。
きょん 他の芸人の点数が出ているときに話しかけると「黙ってて。計算してるから」って。
――続く8組目のビスケットブラザーズが計481点と大爆発し、コットンとや団はともに2位に順位を下げました。残るは2組。ドキドキしましたよね。
西村 ニッポンの社長と、最高の人間が残ってましたから。ぶっちゃけ、キビしいわ、と思いましたね。でも9番手のニッポンの社長の点数が、「89」「93」「92」って出た時点で、大丈夫だと思いました。
ラスト出番の最高の人間のときも最初の3人が「91」「92」「93」と出した時点で、生き残ったと思いましたね。残りの2人が「97」「97」はないだろうと思ったので。
——本当に計算が速いんですね
西村 合計点が発表される前に言ってました。「ファイナル行けたぞ」って。
きょん 「よし、大丈夫だ」って。
——でも、西村さんは文系ですよね。慶応大学の商学部ですもんね。
西村 でも、理系もできる文系なんで。頭はいい方なんです。
きょん 自分で言わないでしょ、普通。

取材・文/中村計 撮影/下城英悟
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