【漫画あり】35歳独身・いろんな「友だちづくり」を試した結果、いちばん効果的だった大人の友だちのつくり方とは…
集英社オンラインで反響を呼んでいる『くも漫。』に続き、35歳独身男の友だちづくりを描いたデビュー作『僕にはまだ 友だちがいない』が公開された漫画家・中川学。本作を通して中川氏が見出した「大人の友だちづくり」の極意とは?
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最も効果的な「大人の友だちづくり」の手段は…
――本作でいろいろな「友だちづくり」を試した中川さんからみて、最も効果があると思った方法はなんですか?
やっぱり飲み屋だと思うんですよ。近所に行きつけの飲み屋を作る、この結論に達しました。更に完璧にするのであれば、例えば新宿ゴールデン街にあるような文壇バーや映画バーといった自分の趣味にマッチする飲み屋さんを選べば、共通の話題を持てるので確実性があがると思います。東京じゃないと難しいかもしれないですけど。
――本編でも、バーには行っていましたよね。
そうですね。家の近所のバーだったんですけど、このときは全然うまくいかなくて。何度も通ってマスターと親しくなれば、そこから常連さんと繋がっていけたのかもしれないですけど、通いはしなかったので。
実は、「一回行ったことあるから行こう!」って、いい顔してトキワ荘のみんなをそのバーに連れて行ったことがあるんですけど、「その人数では入れません」と入店を断られてしまったんです(笑)。5人ぐらいだったけど、ちょっと厳しいバーだったみたいで。だからバー選びも大事ですね。

バー、それは「できる大人」の秘密基地
――教会のクリスマス会に参加したエピソードもありました。
教会には3〜4回行ったんですけど、最初は入るのにすごく勇気がいりました。ただ、みなさんすごくウェルカムな感じで、逆にそれが怖いというか(笑)。本当にいい人ばっかりなんですけど……。

浄土真宗なのに教会のクリスマスに参加した中川氏
――友だちとはちょっと違うな、と。
結局、そこに気付いちゃうんです。同世代の人もいるし、みんなすごくいい人なんだけど、近づいてみたらうっすら透明の壁がみたいなものが見えて。もちろん比喩表現だけど、その壁を越えてすごく仲良くなったときには、自分もそちら側の人間になっているんだろうな……、みたいな(笑)。そういう意味でも教会は友だち作りの場所ではないなと思いました。
友だちづくりには習いごとも効果的?
――バーのほかに可能性がありそうな方法はありますか?
絵画教室やカルチャーセンターに通うというのもありだと思います。僕もデビュー作を出した後に、セツモードセミナーという絵の学校に通って、知り合いや友達ができたので。
――漫画家デビューをしてから絵を習いに行ったんですか?
全然絵が書けないので、ちゃんと勉強してみようと思ったんです(笑)。ちなみに、いまも漫画家の根本敬先生が講師を担当されている「特殊漫画家-前衛の道」という美学校の講座に通っていますよ。
――なかなか、面白そうな人が集まっていそうですね。
僕以外にも漫画家さんがたまに参加したり、競輪場で働いている女の方や外国の方、アイドルやってますみたいな人もいて、自分も含めてなかなか正体をあらわさない怪しい人たちが集まっています(笑)
――本編の後半では、トキワ荘の同居人B氏とのエピソードが中心になっていきました。現在もB氏とつながりはありますか?
Facebookでお互いに近況は知り合っていますし、一度、地元の東北に帰っていましたが、いまは彼も東京に住んでいるので11月にトキワ荘のみんなで飲みにも行きましたよ。コロナ禍もあったから、直接会ったのは3年ぶりぐらいでしたけど。
――結論を決めずに走り出した「友だちづくり」が、あのようなラストに着地したのがすごくいいなと思いました。
本当にラッキーとしか言いようがないです。B氏のことを思いつかずに、前半の雰囲気のままだったら、どうなってたんだろうって。最終話のネームを担当編集さんに伝えたら「いいじゃないですか!」と言ってくれたので、「あ、もしかしたらコレいけるかも?」という手応えはありました。
2022年末現在、中川さんは友だち何人いますか?
――本編には、中川さんの年表とともに、友だちの数の変遷も掲載されていました。あれから10年以上が経ち、現在だと何人になりそうですか。
6人ぐらいじゃないですかね。セツモードセミナーで知り合った人がひとりと、あとはトキワ荘のメンバーです。

20歳を境にどんどん友だちが減った中川氏
――トキワ荘の存在は大きいですね。
本当にでかかったですね。それまでひとりで熟成させてきた好きな映画の話や趣味の話を人とできたのはトキワ荘が初めてでした。当時のトキワ荘プロジェクトでは、5人くらいの漫画家のたまごが住む1軒家が都内に20か所くらいあったんですが、いまは50人くらいが多摩トキワソウ団地というひとつのシェアハウスに集まっているみたいで、それもちょっと面白そうですよね。
――友だちとは日頃どんな遊びをしているんですか?
それこそ一緒に映画を観にも行きますし、先日は爆笑問題の漫才を観に行きました。あとは、前回の参院選前で僕はどこに投票したらいいかわからなくなってしまったので、ファミレスに行って「〇〇党ってどうなの?」みたいな相談をしたりもしましたね。トキワ荘時代は一緒に投票に行ったりもしていたので。
――トキワ荘には、どのくらいいたんですか?
本当は3年で出なくちゃいけないんですけど、僕は 6年くらいいて、その間にメンバーも結構変わりました。漫画をやめてしまった人もいますが、普通の友だちとして付き合いは続いています。
「友だち」という肩書きよりも大切なこと
――この作品を描き上げたことで、得られた学びはありましたか?
あとがきにも書いたんですが、「友だち」や「仲間」とかいう肩書きではなく、実際にその人とどのような関わりを持てるかが大事だなと思いました。
――確かに、いまの中川さんは友人もいらっしゃいますし、コミュニケーションにも問題がなさそうに見えます。
そうですね。でも、社会人になってから上京するまでの期間は、ひとりでつらいことが多かったし、つらさに麻痺して途中から何も感じなくなっていたくらいでした。
――『くも漫。』でも描かれていましたが、漫画家を目指すことを決意する直前まで、メンタル的にもかなり追い込まれていたんですよね。
仕事が続かなくてハローワークに通ったり、途中からはハローワークに行ってくると親に嘘をついて無料駐車場で1日寝ていたり、そういうことの連続でした。映画の感想を言い合う人もいないし、何事もひとりで自問自答していたので、孤独ではありましたね。
――例えば今、当時の中川さんのような思いを抱えている人にとって、この漫画は友だちづくりの参考書になり得ると思いますか?
うーん、どうですかね。ただ、前半は割とネガティブなキャラクターではじまったのが、だんだんアグレッシブに行動していくようになるので、そこは元気になってもらえるのかもなと思います。自信を与えられるかまではわかりませんが、こんな僕でも仲間ができたので、まずは笑って元気になってもらって、あわよくばなにかの参考になれたらうれしいですね。
【漫画】ひとりカラオケ、ひとり焼肉、ひとり映画館、このままいくと孤独死だ…「35歳独身男の大人の友だちづくり奮闘記」(すべての画像を見るをクリック)

漫画を1話ごと読みたい方はこちら。くすりと笑える中川先生のレビューつき
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取材・文/森野広明 漫画/中川学
僕にはまだ 友だちがいない


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