みなさま、こんにちは。ヨガ講師やセラピストなど女性のカラダとこころの健康にまつわる活動をしている、仁平美香です。
今回は、テニス界のレジェンド、ヴィーナス&セリーナ・ウィリアムズ姉妹がいかにしてテニス界のレジェンドにまで上りつめたかを、ふたりの実人生を元に描き、父親を演じた主演のウィル・スミスがアカデミー主演男優賞を受賞した『ドリームプラン』(2021)についてご紹介します。
何かをはじめようとして「自分には無理かも」という気持ちがよぎるとき、人の目や意見が気になり思い悩んだとき、そして、心配するあまりに大切な人(や子)の夢を素直に応援できないときにも、きっとこの作品が何度でも力になってくれるはずでしょう。
貧しく、差別や理不尽な暴力などに耐える日々を送っていたリチャード(ウィル・スミス)は、テレビでテニスプレイヤーの成功ぶりを目にし、子供が生まれたら世界一のテニス選手に育てると心に決めます。
テニスの教育法を独学で研究して、78ページもの「計画書=ドリームプラン」を立てたリチャード。その計画はテニスを上達させるための項目だけでなく、世界で戦っていく際にも必要な、語学に関してまで盛り込まれていたから驚きです。
2人の娘が生まれると、テニス未経験にもかかわらず娘たちを熱血指導。自身を「チャンピオン育成業」と名乗り、すべての情熱をふたりに捧げます。黒人がテニスをするのさえ珍しかった時代。周囲からは奇想天外な夢を鼻で笑われ、雨の日でも練習を休まないことから、児童虐待で通報されたことも。
リチャード自身は、プランの遂行以外には興味がなく、ときに身勝手で高慢な態度をとることもある人。ところが、姉ヴィーナスが地元のジュニアトーナメントで優勝し、姉妹たちが浮かれて自慢しはじめると「絶対に謙虚さを忘れてはいけない」と厳しく、そして何度も言い聞かせます。これから更に強い相手と試合で戦っていく心のありようについて、説いたのです。
厳しい練習と同時に学業もおろそかにさせない徹底した指導をしながら、娘たちのメンタルも全力で守ろうとしてきた彼。プレッシャーに押しつぶされ壊れてしまわないよう、成長して準備が整うまでは、3年間ジュニアのトーナメントには出場させないと決めていました。
絶対に意見を曲げないリチャードでしたが、唯一プランを変更したのは、姉のヴィーナスの気持ちを尊重し、禁じていた試合に送り出したとき。
成功を急ぐことで娘が傷つき、挫折することを強く恐れていましたが、自分よりも先に娘が恐怖を手放し、次のステージに進もうとしていることに気づき、わが子を心配する心の弱さを乗り越えることができた瞬間でした。
「私がなりたいのは私」。最強の姉妹テニスプレイヤーを描いた映画『ドリームプラン』に学ぶ、夢の叶え方
ヨガ講師として活躍する仁平美香さんが、女性の美と健康に効く映画をピックアップ。今回は『ドリームプラン』をご紹介。映画を見終わった後に実践したい、体を整えるメソッドも必見。
ヨガの伝道師・仁平美香の“ととのう”映画⑨
ウィル・スミスのアカデミー賞受賞作

Everett Collection/アフロ
最強の姉を持つ、妹のしなやかな強さ
この作品は、姉ヴィーナスがトーナメントに出場し戦うところまでを中心に描かれているのですが、妹セリーナのシーンも、とても印象に残っています。
はじめてコーチがつくことが決まったものの、指導してもらえるのは姉ひとりだけ。ずっと姉と父と一緒に練習してきたセリーナは、姉がコーチに指導を受けているビデオを見ながら、母親と別の場所で練習をする日々を経験しています。
姉がこれから戦うプロトーナメントの大きな会場のコートを、ひとり静かに見つめる妹に、父親はそっと声をかけます。
「秘密を教えよう。おまえの姉さんは世界一の選手になる。間違いない。でもおまえは史上最高の選手になる。かつてない偉大な選手に。ヴィーナスの陰でつらかったろう。おまえは耐えると信じていた。タフなファイターだから。すべてわかっているとも」
妹のセリーナが、くさらずに後にこの言葉を現実にできたのは、やはり家族が自分を信頼しきってくれたから。だからこそ、自分を疑うことなく並々ならぬ努力を続けてこられたのでしょう。
映画の最後に少女時代の本人映像が出てくるのですが、その中でインタビュアーから姉妹に向けて「どんな選手になりたいですか?」と聞かれ、セリーナは「私みたいな選手」と答え、にっこりと笑います。
私は、自信を失くしそうになったとき、誰かをうらやむ気持ちが浮かんできたとき、ほかの誰かや何者かになるのではなく、「自分は自分になりたい」、と思うようにしています。自分が本当に好きなことをし、やるべきことを丁寧にやるだけだ、ということを再確認するためです。
姉妹が幼少期から、「私がなりたいのは私」と言えるしなやかさを持っていたことは、目標としたい心のあり方。それはきっと、誰よりも彼女たちの才能を信じていた、父親の存在があったから。
偉業を成し遂げた家族の絆の強さに、憧れずにはいられません。
スポーツ前に最適! 股関節をゆるめるポーズ

ここからは映画を見たあとに実践したい簡単なヨガをご紹介していきます。テニスシーンは実際にテニスプレイヤーが演じていて、力強く、フットワークが軽やかで、見ごたえがありました。今回は姿勢を美しくし、スポーツをする上でも最重要ともいえる、体幹の深層にある腸腰筋や、股関節をゆるめるポーズを紹介していきます。
1,腰幅に脚を開きます。
2,片脚を大きく後ろに引き、膝と足の甲をマットにつきましょう。肩の下に手が来るようにして指を床につきます。
※このとき、前脚のすねが床に対して垂直になるように、後ろ脚の膝をつく位置で調整しましょう
3,余裕があれば、上体を起こし、両手を膝の上に置きます。
※無理せず手を床についたままでもOK。柔軟性にあわせて実践してください。
4,ゆっくり5呼吸ほどキープします。
5,反対側の脚も同様に行いましょう。
文/仁平美香
『ドリームプラン』(2021)King Richard 上映時間:1時間24分/アメリカ
2人の娘を世界最強のテニスプレイヤーに育てる夢を持つ破天荒な父親リチャード(ウィル・スミス)。テニス未経験の彼は、娘たちが生まれる前から「常識破りの計画=ドリームプラン」を独学で作成。その無謀なプランと娘たちの可能性を信じ続けた父は、どうやって2人の世界チャンピオンを誕生させたのか? グランドスラム(テニスの国際4大大会)30回優勝。5つの金メダル獲得という輝かしい功績の世界最強のテニスプレイヤーでありながら、起業家・投資家・ファッションデザイナーをはじめ様々な分野のビジネスで、大成功を収めている姉妹の真実の物語。
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